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【投機の流儀 セレクション】金融相場から初期業績相場へと移行したが2万6千円達成に市場は「敬意を表した」

はじめに
週明けは祭日で休場であるし、目先的には25日線との乖離が週末は「買われすぎのメドとされる5%」を切ったところであり、週末はNY小幅安・日経先物小幅高という状態で、今は無風状態だが週明けは読めない。
「コロナ禍を奇貨とした過剰流動性に支えられて来た金融相場の宴」が、休演の幕間がないまま「景気循環先食い相場」に移行し、特に短期間の上昇が空売りを誘発し、実質空売りであるダブルインバースが、この10日間で3割も増えた。
200日線との乖離は何年振りかの高さを示し、NT倍率(日経平均÷TOPIX)は史上最高値に届いた。中期的には2年先の景気回復を買った相場は一旦幕間を入れる段階も在り得るが、「需給に勝る材料はない」のだから目先の深押しはない。

先週2日目の17日(火)に2万6,000円の大台を示現したので、ひとまずの達成感と(市場用語で「敬意を表して」と言うが)翌日水曜日は300円強の一服感を示し、2万6,000円台はたった一日で終えた。
3月以降大幅に上昇したのはワクチンの開発でもなく大統領選挙でもない。それは2年後の景気回復を買ったものだ。言わば景気循環に乗った初期の金融相場であり、2年後の夢を買う「理想買い」の姿だった。今期予想ベースのPERで言えば、2万6,000円時点では24倍であり、2010年以降の10年間平均の15倍をはるかに超えている。「2年後の業績回復を先食いした相場」というだけでは解明し難い。結局は過剰流動性のなせる結果である。2年先の業績回復シナリオを先食いして急騰する相場は言わば初期業績相場の青春期相場であり、言わば「理想買い」である。
現実に存在しない姿を想定して買うのだ。だからそれは「峻厳なる現実の世界ではなく、豊富なる可能の世界なのだ」。だから猛烈に上がる。ところが実勢に目覚めた時にそれは「実勢売り」に変化する恐れは常にある。先週週初の上げ幅521円は6月の1,051円高以来の大きさであった。
これは7~9月期のGDPが市場予想を上回り投資家心理が改善したことが背景にある。GDPの上振れ・経済活動の本格的再開に向けた期待・過剰流動性の滞在、こういうものに対して機関投資家が資金を投じ、景気回復敏感株でオールドエコノミーの海運・空輸・空運・自動車などが上昇した。これで11月前半の上げ幅は13%(2,930円幅)に達しており25日移動平均は一旦は8%以上乖離した。「買われ過ぎ」の「5%超」である。下がらない相場は上がらないし、上がらない相場は下がらないが、半月で3,000円弱も上がり、本稿で「陰の極」と言った3月19日から8ヶ月で9,500円上がった(1万6,500円→2万6,000円)。こうなると一旦引き潮に転じたならば、その下げ足は速いと見るか、踊り場と見るか、とにかく第1幕の宴は一旦は幕間を入れるときがあると見る方が市場の生理であろう。

【今週号の目次】
第1部 当面の市況
はじめに
(1)金融相場から初期業績相場へと移行したが2万6千円達成に市場は「敬意を表した」
(2)個人売り越し。12月第2週は7,000億円弱を売り越したが海外勢の買い余力は大きい
(3)「景気に対する株価の先行性」の発揮であり、「需給に勝る材料は無い」、これが今の市況だ
(4)市場内部要因の指標から見れば僅かながらも過熱感
(5)株式市場に先行すると言われているLME銅
(6)混迷下の、今までの株高はバイデンもワクチンでもない、また言うが景気回復の理想買いである
(7)金融相場から業績相場へ移行するプロセスでの踊り場に調整局面はあるか
(8)中長期の見方:今の市況の原動力たる「過剰流動性」の潮が退く気配は何から感ずるべきか
(9)投信4ヶ月連続資金流入超
(10)海外勢が株高牽引
第2部 中長期の見方
(1)過剰流動性の終焉はあるか――我々はアメリカを見続けよう
(2)既報から述べ続けてきた「景気回復先取り相場」の背景
(3)米欧景気、コロナ第3波で停滞に入る
(4)バイデン政権下ではねじれ議会の公算が大きい
(5)市場は、「議会は共和党優勢」を歓迎する、つまりねじれ議会を望む
(6)バイデン、政権移行へ着々準備
(7)民主党のバイデンが大統領に就任し、上院議会では共和党が過半数を占める、この「ねじれ組み合わせ」は市場にとって好都合だ
(8)もしも「市場が大荒れになったら好機到来だ」の補足
(9)惜しむらくは菅首相のデジタル庁設置の切り出し方だ
(10)金利とドル円相場
(11)メキシコペソ8ヶ月ぶりの戻り高値
(12)自動車部品など輸出企業にメリット、対中国輸出の工業品の関税大幅撤廃
(13)ポストコロナの世界経済=「3%」という弱い成長が続く可能性が高い
(14)中国の「2023年問題」
(15)手ごわいぞ、中国は
(16)コロナ問題と米中覇権争い
(17)脱炭素化宣言――ここから生まれる銘柄群があるはずだ
(18)「模範国家ドイツという幻想」


【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
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