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【投機の流儀 セレクション】この30年間の日本衰退の諸現象

①30年間の日本衰退の諸現象を明らかにし、その原因を明らかにしたい。その問題点を大きく改革する方法も考えたい、その政治意図があって執行の構えが在れば日経平均は4万円、5万円は夢ではない。現に4万円は1989年12月に一度通った道だ。(20世紀の最高値3万8915円)。

大国の衰亡は古代ローマの時代から例外なく経済の衰亡によって起こってきた。古代ローマも中世のヴェネチアも100年前の3つの帝国の崩壊(★註)も全て経済の衰亡によって起こってきた。
(★註)第1次大戦ドイツの第3帝国滅亡、1917年レーニン革命によるロシア帝国崩壊、オーストリア・ハンガリーのハプスブルク家の崩壊、

今の日本は30年間衰退傾向をたどっている。これを放置している以上は株価の上限は低い。30年間の日本の衰退の現象面を具体的に挙げまる。
そして、株式市場に直接関係ある経済成長に重点を置く。
経済成長とは標準語で言えば、GDPが前年よりも何パーセント上昇したかを言う。これは「成長と循環の好循環」と岸田内閣が言う「成長」の意味である。
この成長を阻害する原因を明確に突き止めて明らかにしたい。
そして、それを根本的に改める方策を明らかにしたい。したがって、岸田内閣がその改革の方向に向かえば日経平均は4~5万円は夢ではない。

4万円弱というのは89年12月30日に一度通った道である。「89年12月30日、3万8,915円」。ここを天井として株価も日本経済も衰退した。
その原因は三つある。

この30年間の日本の衰退傾向
日本の衰退傾向を逐一云々して未来を悲観的に嘆くことは筆者に言わせれば「自虐趣味」であってそれは冷静な見識ある見方とは言えない。ところが、この自虐趣味が冷静な見識ある見方であるという風潮が日本に流行りつつある。筆者に言わせればこれは「日本病」である。
そして未来を明るいものと見なして期待を持って歩むことをノー天気な楽天家としてバカにする傾向がある。これも「日本病」である。
筆者は敢えて言えば「リベラルの真正保守(★註)」としての見地から言いたい。まず最初に、事実として列挙しておきたい。日本が30年間衰退傾向にあったことは残念ながら事実である。思いつくままにいくつかを列挙してみよう。そしてその後、この背景に何があるのか、今後どうするのかを考えよう。
(★註)真正保守とは何か。過去を懐かしみ過去の通りにせよというのは単なる感傷的な懐古趣味であって「保守」ではない。保守とは強いて言えば、過去の歴史に(を、ではない)学び、良いところは重用し悪いところは用心深く改め、急激な改革には慎重に対して、焦らず、諦めず、一歩一歩を着実に改革して行く、これが「真正保守」だ。

30年前、日本は
GDPのPHは世界2位、
②GDPは2000年=100として今も100で「ゼロ成長」。(1973年の下村治の「転向」は的中した)、韓国150、スェーデン140、アメリカ128、英国128、ドイツ120、
➂海外資産、世界1、
➃株式時価総額、世界1(NY+ロンドン、より大)、企業別時価の世界10位の中の7社は日本だった、いまは30位にトヨタだけ、
平均株価は20世紀の高値の0・7倍、アメリカ10倍、中国6倍、
⑤国土の時価、1990年世界1(北米大陸の4倍)、
➅国際競争力、世界1位(IMF国際競争力年鑑)、2001年世界23位、いま31位、
⑦半導体の世界シェア、1998年、日本が世界の50%、今は10%、
アメリカ38%→50%、アジア3%→25%、
➇博士論文の本数、この30年間、激減

筆者は、敢えて言えば「リベラルの真正保守(★註)としての見地」から言いたい。
日本がこの30年間衰退するのは指導者が悪いからか?
1980年後半、登り行く日本をアメリカの追尾国と見做したレーガン(★註1)は日本を恐れた。冒頭に列挙した事実を見れば無理もない。
そのレーガンの日本弱体化計略に日本がひっかかったからか。(プラザ合意と「ゆとり教育」と「休祭日の増加策」)。
戦後77年間、〇吉田茂、〇岸信介、〇池田勇人、〇佐藤栄作、〇福田赳夫、〇中曽根、〇小泉、〇安倍、この8人が「国を変えた政治家」だった。その後、平成時代以降は敢えて言えば34年間で小泉、安倍の二人だけだった。「カネに汚い」とか「副作用」を云々するのはやめて「効果」だけでモノを言いたい)。
➂「人口ボーナスの消滅」は主たる理由にならない(高度成長期の労働人口増加は1%、その間の成長率は10%。その差9%は何か?)

国家を企業に例えれば経営者は政治家である。経営者が内輪もめしている企業は伸びない。
政策や主義主張の闘いは派閥ごとに在って良いし、党派同士で戦いが在って良い。今の政治家の闘いは足の引っ張り合いではないか。

登り行く日本の時代には、政治家のブレーンは官僚であった。国内は許認可関係を通して官僚が全ての情報を握り、海外は大使館に駐在する官僚が情報を握る、斯くて、米CIAや旧ソ連のKGBのような情報機関を持たない日本(★註2)は、官僚が内外情報を全て握る、その官僚を09年~24年(★註3)の15年間、虐げて能力発揮を奪った。

官僚自体の堕落もある
大蔵官僚出身の元財務相の藤井裕久は言っていた。
「官僚は政策では政治家に従わねばならないが政治とは一定の距離を置くことが官僚の矜持である。国民の公僕として昔の言葉で言えば官吏の本分「吏道」を地道に歩んでほしい」と。

【今週号の目次】
第1部 当面の市況第1部 当面の市況
(1)膠着状態のまま1週間を終えた
(2)週末引け後に日銀次期総裁の件
(3)4月からの日銀新体制、政府は雨宮氏に総裁就任を打診したが辞退された
(4)植田新総裁就任にあたって
(5)次期日銀総裁は日銀出身者ならば円高、財務省出身者ならば円安、と踏んでいたが、いずれでもない学者出身の植田氏
(6)日本株市場に大きな影響を与える海外勢の動き
(7)「東証株価指数TOPIXコア30」は先週前半で10ヶ月ぶりの高値を付けた
(8)日経平均は4日続伸したが国内外の経済の行く末には暗雲が晴れたわけではなく上値は重い、「様子見」に入ったか
(9)コロナ制限が緩和されて消費回復が期待、日本のインバウンド需要も回復加速
(10)当面為替は静かだろうが円安傾向は伏在している
(11)2月は3月期末を控え需給が悪化する恐れ
(12)銀行、9年ぶり高水準で貸し出し先の倒産増加へ備え
(13)グローバル企業が業績を下方修正
(14)電力大手9社が最終赤字
第2部 中長期の見方
(1)米中対立の端緒は具体的に始まった
(2)世界で最も危険に晒されている国=日本、5年間で1.5倍の大軍拡
(3)日本の実質ゼロ金利時代はいよいよ終わりを迎えることと経済成長を高める必要性
(4)武者リサーチ314号(2月6日)より
(5)今年の世界経済はやや軟着陸できる可能性
(6)「ディスインフレ( 筆者註:インフレの伸び率が鈍化すること)のプロセスが始まった」
(7)「FRBのハト派転向、市場は楽観」(FRBは楽観を戒め)
(9)難しい財政規律――GDPを増やすことだ
(10)燃料価格アップに拠るインフレ以外は「良いインフレ」だ
(11)今年は「守りの年」か?好機を逃すなかれ
(12)この30年間の日本衰退の諸現象

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
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