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【投機の流儀 セレクション】大手銀行・大手証券の強引営業が引き起こした仕組み債のロックインの危険性――それが現実化すれば再び「阿鼻叫喚相場」

大手銀行・大手証券の強引営業が引き起こした仕組み債のロックインの危険性――それが現実化すれば再び「阿鼻叫喚相場」
既報で述べたが、大手銀行と大手証券が仕組み債というものを販売していた。十数年前、リーマンショック以前にメリルリンチ証券から勧められて筆者も考えたことがあったが、仕組みが複雑でリスクが大きいので筆者は乗らなかった。それ以降仕組み債についてはその将来性に関心は持って眺めてきた。日経平均が2万2000円~2万3000円の頃に1万6000円を割ったならば「ロックインする」仕組み債を銀行は売ったし、大手証券はアメリカ株での仕組み債を売った。株価が販売時の値段よりも3割ぐらい下がるとその時価の株式で返済される。つまり3割ぐらい下がった株で返済される、しかも株数は買った時の株式水準に応じた株数だから返済される株式数は高値水準の発行時点の計算??になるから株数は減る。しかも時価は何割も減っている。膨大な損を受ける。これが「ロックイン」という制度である。したがって、日経平均が1万5000円ぐらいに近付くと仕組み債のロックインが近付く。その時に市場は荒れ狂う阿鼻叫喚とも言うべき有様を呈さないとも限らない。多分8分通りの確率で(この8分通りという数字には根拠はない。筆者が見当をつけて言っているだけだ)それは無いと思うが、大和証券の木野内氏が言っている「二番底は無い」ということは「L字型大底」」「銘柄別なし崩しに大底をつけて1万6500円は再びはない」という意味ならば話しは判るが、彼は仕組み債のリスクについては触れていない。多くのストラテジストや評論家は仕組み債については触れない。タブーになっているのだろうか。

筆者の知人で超アグレッシブな運用を続けていた農林中央金庫は債務担保証券(CDO)と合わせて有価証券評価損が1.5兆円に膨らんで資本基盤が劣化し経営危機に陥ったこともリーマンショック時にはあった。投資家が今保有しているはずの仕組み債は基準価格の20~30%下でのロックインのタイプが主流である。銀行は主として日経平均の仕組み債をつくっている。したがって、日経平均が20~30%下がるとロックインの恐怖が来るとそこに阿鼻叫喚の状態がないとは限らない。ない確率の方がかなり高いとは思うが一応このことは脳裏に据えておくべきである。

【今週号の目次】
第1部 当面の市況

(1)4月末は一日500円幅以上を上げても新しい相場が始まったわけではない。「Sell in May」を想起する場面もありうる。但し週初は大幅下げはない
(2)NY株、33年前の10月ブラックマンデーの年の春、月間10%を超える大幅高があったが、今年4月はそれ以来の月間11%の大幅高、但しトランプの対中発言で警戒売り
(3)先週は日米の金融政策会議に注目されたが・・・
(4)3月に比べてだいぶ落ち着きを取り戻した金融市場
(5)コロナ禍の副産物銘柄
(6)当面の市況は往来相場か
第2部 中長期の見方
(1)大手銀行・大手証券の強引営業が引き起こした仕組み債のロックインの危険性――それが現実化すれば再び「阿鼻叫喚相場」
(2)「有事」の指導者の真価が問われるとき
(3)「見えない敵」「攻撃の意思なき敵」との「勝者なき第3次大戦」の勃発と継続
(4)ゴルフ会員権大幅安――歴史は繰り返すといわれ、似たことは起きるが「お化けは同じ顔では現れない」
第3部 二番底、三番底あるいは大底を考える
(1)二番底、三番底、または大底 、それを測るものの一つたるPBR尺度
PBR0.8倍~0.9倍(金融危機ゾーン)+
PBR0.8倍~0.9倍(景気後退ゾーン)
(2)コロナ禍が終わっても石油価格が暴落低迷と借金絶拒絶症があるからV字型回復はない
(3)コロナ禍が近い将来をこう変えるだろう
(4)コロナ禍が終息すればインフレ懸念
(5)実体経済の悪化→銀行が持つ不良債権の増加→実体経済の深さと広がりを測る銀行株の動き
(6)コロナショックが襲う銀行の三重苦
第4部 読者との交信
(1)「動画」(4月28日収録)の際の私に対する御質問
「資金の何割ぐらいを現金化していますか?」という御質問への回答の補足
(2)愛媛のM(ちりちり)さんとの「ジャンク債について」の交信(4月29日)
(3)筆者のゼミ友との「コロナ対策について」の交信(4月29日)


【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。

ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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『投資で勝ち続ける賢者の習慣』
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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