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【投機の流儀 セレクション】俗に言う「内憂外患」による国内景気に対するブレーキ

2019年10月~12月期のGDPは前年同期比▲6.3%となった(内閣府17日公表)。これは5四半期ぶりのマイナス成長である。19日発表の機械受注(設備投資の先行指標)も見通しは1~3月期は前期比▲5.2%となる。これは3四半期連続で落ち込んだ。言わずもがな設備投資はGDPの構成要素4つのうちの一つであり、しかもこれは所謂「ケインズの乗数」が掛かるからその影響度は1倍以上になる。消費税の影響が大きい。今年に入ってから例えば三越百貨店の株価は1,000円以上をキープしていたが、今は700円台だ。これがその象徴である。消費はGDPの6割を占めるから消費増税の影響は「限定的である」という大和総研熊谷亮丸氏と「破壊的な影響を与える」という元京大助教授・野村證券・早大教授だった植草一秀氏の両端をとるならば、後者の方に傾きつつある。元日銀副総裁も植草氏と同様のことを言っている。消費も設備投資も民事は総崩れと言ってもいい状態になっている。

そこへ持ってきて海外要因は新型肺炎の騒動は一過性のものとしても、これの実体経済への影響は小さくはないし、長期的には米中貿易戦争は今は話題になっていないが、少なくとも10年は続くだろう(米ソ冷戦は46年続いた。1945年~1991年)。

既報でも既述したが、米ソ冷戦よりも米中摩擦の方が事態は複雑である。今は米ソ冷戦のようなイデオロギーと市場とが真っ二つに分かれているわけではない。国営資本主義とはいえ、中国も資本主義経済であり市場経済である。しかもグローバル化している。キリスト教国であるアメリカ(ユダヤ教もいるしイスラム教も多いが、本質的にはキリスト教国)と無宗教の中国(中国共産党の創業者毛沢東以来「宗教は麻薬だ」が根底にある)との民族性の違いもある。人口は中国は米国の4倍もある。人口は戦力にも農業力にも工業力にもなるから最大の資源である。

米ソ冷戦と違って米中摩擦は表面的には経済戦争ではあるが、実態は「被追尾国・対・追尾国」という世界史上の大国の興亡の面から見るべきものである。そして大国の興亡は必ず経済力の衰亡によって勝敗が決まる。古代ローマ以来例外なくそうであった。戦争やクーデターによって決まるのは表面的な表れであって、根本的には経済力の衰亡が大国の衰亡につながる。そういうことから言えば、米国よりも中国の方が衰亡の背景は大きい。これは項を改めて独立した項で詳細を述べたから、今週号では割愛する。

機械受注統計は19日、内閣府が発表。

1月のコンビニの売上高の合計は前年同期比0.4%増となり2ヶ月ぶりに増加した。キャッシュレス還元の効果に加え、新型肺炎のマスクなどの衛生用品の需要が高まったためであるとされている。

【今週号の目次】
第1部 当面の市況
(1)仮の「陰の極」か?
(2)2月の動きの概観
(3)続落して安値、市場内因から言えばこうなる
(4)打診買い第一段目はいいところへ来たと思いきや・・
(5)新型肺炎拡大の日本とNYへの影響
第2部 中長期の見方
(1)チャートでは「アイランド・リバース(離れ大島)」の示現
(2)新型肺炎の企業業績への影響を先取りした株式市場
(3)株価変動の景気先行性について
(4)新型肺炎騒動の前は米S&P500種総合株価指数はPER20倍
(5)長期の見方:米経済の見方「明るい見通し派」と「警戒派」
(6)アベノミクス相場始動期以降の日米のPERの推移
(7)俗に言う「内憂外患」による国内景気に対するブレーキ
(8)「語り部」「株式評論家」について
(9)誰でも気にする下値の範囲と時期
第3部 読者との交信欄
読者Tさんとの「トルコリラ債券満期の償還について」

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。

ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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