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【投機の流儀 セレクション】2万7000が当面の下値抵抗線化するか

週明け23日(月)の日経平均500円高は「一種のサプライス」であったと思う。菅首相が全面支援した元国家保安委員長が横浜市長選に敗れた。これは政権支持率のリスク値域と言われる30%割れに入ったことと関係がないと自民党幹部は強弁しているが、これは菅政権支持率の30%割れという致命的な数値と無関係ではない。関係があるからこそ国政とは関係ないと自民党幹部は強弁するのだ。しかし、小さな悪材料ではなかった。翌日の500円高は政権不安に対する一種のアク抜け感である。勿論、出尽くしてはいないが一種の「悪材料からのアク抜け感」であったろう。その翌日も高く、しかも全面高で連騰したことは、小さいとはいえ悪材料の一つが露わになったからであろう。市場は不透明感を最も嫌う。
政治の不確実性が一部は消えたという意味で、元々カネ余りの時代だから全面的に買いが入った。一部の指標株だけで上がった500円高とは少々様相が違っていた。マザーズ指数は個人投資家心理の強弱が最も敏感に反映する指標であると筆者は思っているが、週初23日の主要指数の中でも最も勢い良く上昇したのはマザーズ指数であった。これは小さな出来事ではあっても日本株の主要な変化を告げていたのだと後になってみたら言えることなのかもしれない。

4~6月の決算が意外に好調だった。むしろサプライスだった。ところが、決算後の株価反応が低調だったこともまたサプライスだった。この好決算への反応が低調だったことは、
マクロ経済の不透明感が出てきた、特に米中景気の失速懸念、
米の量的緩和の縮小の観測、
国内政局の不安感、→この問題に答えが出つつ立ったから大幅高した
インド型(デルタ株)が世界中で猛威を振るっている、である。

インフレを抑えるためにFRBはテーパリングを遠からず開始する時期に差し掛かっており、金融政策には景気の下支えが期待できなくなっている。ましてや日銀の「ETF買いという株価操作」(個人や一企業が行えば株価操縦として犯罪になるが中央銀行が行えば犯罪でない)がなくなり、世界市場の中で出来高の多い日経平均株価は国際的大型ヘッジファンドの売りヘッジの対象とされてきた場面もあったかと思う。マザーズ市場が23日にはあらゆる指標の中で最も力強く上昇したが、これが続くようならば個人投資家の投資家心理に変化が起こり、先進国の中で「最も出遅れていた日本株」の見直し気分になる一つの潮の目変化だということが後日になってから言えるのかもしれない。いずれにせよマクロ指標では株は買いにくいがミクロで見れば食指を動かされるものはたくさん出てきてはいる。

先々週には日経平均が大きく下げて12月以来の8ヶ月ぶりの値段を付けたが、米株高を受けて自動車関連株や海運を中心に自律反騰を狙った買いが翌日(先週の週初)には入った。香港や上海などアジア株の上昇も追い風となった。これで売買代金が3兆円を超えているようなら相場の潮目は変わったと言えるのだが、約500円高をした日でも売買代金が2.3兆円であるからまだまだ本物ではない。

【今週号の目次】
第1部 当面の市況

(1)「相場は、相場に聞け」―米の出口戦略表明を「懸念材料の表面化」と見て、「不透明な霧が晴れた」と評価する市況
(2)先週明け23日(月)の大幅高を見て考えること、これも同じだ
(3)2万7000が当面の下値抵抗線化するか
(4)個人投資家の心理状況を反映するマザーズ指数
(5)海外勢は国債を4週間ぶりに売り越し
(6)自民総裁選
(7)岸田文雄氏、総裁選
(8)横浜市長選で全てのスケジュールは狂った
(9)菅政権のコロナ対策の無策
(10)内閣支持率低下でも野党の迷走は続くから自民公明党の政権党の座は揺るがない
(11)女性首相を売り物にするという「奇策」はあるか?
第2部 中長期の見方
(1)米国のインフレ懸念→金融緩和の幕引きは近い
(2)FRBの資産買い入れの縮小(「テーパリング」)の影響
(3)年金基金の運営の陰に潜むリスク
(4)スイスとイギリスから見た日本はどう映っているか?
(5)人民元の軽重
(6)「円ドル相場は105円から115円の水準で推移。90円台はもう来ない」
(7)米中冷戦は米ソ冷戦よりも複雑で解決困難である
(8)「世界の警察は辞めた」と公言したのはオバマ元大統領だったが、バイデンの今の苦境とアフガンの問題を本稿で無視して通る訳には行かず、筆者の友人嶌信彦氏の嶌信彦通信;2021年 8月 25日 vol.285を掲載して替える
(9)東電HDの「第4次総合事業特別計画」

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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『投資で勝ち続ける賢者の習慣』
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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