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【投機の流儀 セレクション】長期政権と株価

安倍政権時代の株価上昇率は日経平均で見ると2.3倍ということになっていて歴代3位だということになっている。在任期間中に一番上がったのは佐藤栄作政権(3.1倍)、2番目が中曾根康弘政権(2.9倍)となっていて、安倍政権は2.3倍で歴代3位ということになっているが、実際に筆者がアベノミクス相場と見ているのは12年11月14日の衆院解散が決まった日である。あの日に安倍政権が成立したわけではないが、誰もが、政治が民主党という素人の手のから自民党という玄人の手に移ると見て株を買い始めた、この日が8,665円である。そこから18年10月2日の2万4200円まで実際には2.8倍である。

ただ、ここで言えるのは佐藤政権が3.1倍で中曾根政権が2.9倍で安倍政権が実質2.8倍というのは、彼らが就任した時期による。小泉政権は長期政権であったにもかかわらず、株式はほとんど上昇していない。
しかし、小泉政権が2003年の春(強制的に不良債権のりそな銀行への資金注入したことを以って不良債権処理を完結したとき)、この時に政権が成立していたとすれば約2.5倍である。また、安倍政権の2.8倍というのも民主党の政治不作為時代がリーマンショックの後3年続き、リーマンショックの大底からわずか20%しか戻っていない時の安値から始まった。8,665円はそういう価格である。そこから測れば2.8倍になる。

よって、任期中に日経平均が何倍に上がったということはたいした話しではない。いつ就任していつまでやったかということに左右される問題である。
日経平均の上昇率は在任期間中に1位だった佐藤栄作政権は「昭和40年不況」の日経平均の大底を付ける寸前の大底近くで就任し、就任した翌年の7月から始まった57ヶ月の、当時で言えば戦後最長の景気だった「いざなぎ景気」の期間に任期を務めた。就任期間に「いざなぎ景気」を経て、過重流動性バブルの三合目ぐらいまでを在任した。この間、日経平均(当時の東証ダウ)は3.1倍を示現した。彼は確かに日韓基本条約の締結、沖縄返還、核三原則などを成立させ、ノーベル平和賞を受賞したが、経済政策が良かったから株価が上がったわけではない。就任した時期と在任期間中の運が良かったからだ。
但し、「昭和40年不況」から脱出して「いざなぎ景気」に誘導したことは、まぎれもなく、佐藤政権の下で戦後初の赤字国債(★註)を発行して新幹線の整備・高速道路拡張(当時は幡ヶ谷・羽田間しかなかった)、当時、「文化生活の憧れ」だった公団住宅の拡張、これらに使う大幅な財政出動をして、景気浮揚させ国民の便益に大いに供したことは事実だ。日経平均(当時は「東証ダウ」と言った)は1020円から2500円になった。よって、彼の経済政策は株価上昇に大いに寄与したと言える。(★註;佐藤政権の福田氏は大蔵省出身だったから赤字国債なんて大嫌いだったはずだが、当時の政治家は大義に忠実だった、と言える)。
中曾根康弘氏は1982年11月に就任し、1987年11月まで在籍した。
この期間は日経平均が初めて1万円を乗せ、平成バブル天井の3万8000円台に駆け上がって行く初動段階であった。
在任期間中に日本国有鉄道の民営化や電電公社の民営化など大いに経済を活性化させる仕事はしたが、アメリカではレーガン政権は「株は死んだ」“Death of Equities.”の20年間を破ってNYダウが5倍になったその初動段階であり、イギリスでサッチャリズムが作動して新自由主義的な動きで経済が活性化し、その環境の中に在任期間があった。彼がレーガンと旨くやって「ロン・ヤス関係」で日米間をやってきてレーガンの猛烈な日本たたきを喧嘩せずに唯々諾々と収めてきた。しかし、彼の経済政策が日経平均株価を2.9倍にしたわけではない。

【今週号の目次】
第1部 トランプは再選されるか?
(1)トランプは再選される
(2)しかし、トランプが抱える「大きな不確実性」がある、その1
(3)トランプが抱える「大きな不確実性」、その2
(4)米中対決は、もしトランプが大統領選に負けても続く
第2部 当面の市況
(1)日経ジャスダック指数、年初来高値を更新
(2)今後の市場の関心事;財政出動と外部要因の香港情勢と米中貿易協議の行方
(3)今週の市場の関心は日銀の金融政策よりも財政出動へ
(4)外部要因としては香港情勢(★註)と米中貿易協議の行方の二つだ
第3部 中長期の見方
(1)FRBの動向
(2)米、史上最長景気の分水嶺警戒感
(3)米中貿易摩擦と米景気
(4)世界の民営化史上最大、アラムコの株式公開
(5)日韓関係の問題
(6)低金利は景気浮揚の妨げになる
第4部 長期政権と株価
(1)先々週で憲政史上最長期政権になった安倍政権、その間の上昇率は形式上2.3倍、実質上2.8倍
(2)「検証 安倍政権」 
高村元副総裁の見方
筆者の見方動
野党側の言い分
与党側の言い分
野党側の言い分
17日のNHK、「検証アベノミクス・経済篇」。
第5部 読者との交信蘭


【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。

ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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