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【投機の流儀 セレクション】今の米国株のバブルをどう見るか?

過去のバブル崩壊は、まず金融市場の混乱、そして企業が内部に貯蓄する貯蓄病が起こった。そして家計貯蓄が大幅に増加した。そうすると経済は縮小する(貯蓄は経済の流れからの「漏出」であるからだ)。1637年に天井をついたオランダのチューリップバブルとか、大正時代に日本で狂乱したウサギバブル(ウサギは食肉にもなるし毛皮にもなる軍用にもなるということでウサギを買うことが大流行してウサギが高騰した)などのような特別な品物に対する狂騒は別として金融市場のバブルを振り返ってみる。バブルの歴史は古く、17世紀後半にかのアイザックニュートンが物理学者として有名だったが英国の造幣局長をやっていたが造幣局長の生涯年収に相当する2万ポンド(当時の生涯年収)を南海泡沫会社のバブルで損をして、「天体の行方は計算できるが熱狂株式ブームの行方は計算できなかった」という有名な文句がケンブリッジ大学キングスカレッジに残っている。そしてまた英国ではそれに懲りずにまた同じことがやってくる。1846年に天井をついた鉄道狂バブルである。自己破綻はもちろんのこと破綻や自殺者が出たし、証券会社に猟銃を乱発する事件も起こった。日本の平成熱狂バブル(1989年天井)や米国の住宅債権バブル(2008年夏天井)などもだいたい似たような例が起こる。まず金融市場が混乱する。そしてそれが収まると企業も家計も「貯蓄病」に走る。これが経済を縮小させる。
そして今回だ。
9月にはわずか7日間でNY大型グロース株7銘柄の時価総額1兆円以上が吹き飛んだ。
但し、今回の1兆円が吹き飛んだ7銘柄のバブルについては以前のバブルとは違って、本当の意味のバブルではないかもしれない。と言うのは、2007年の住宅債権バブルなどと違って債権発行に伴う投資ブームが伴っていなかったことだ。アップルやアマゾン・コムなどのハイテク大手は自社の株価が半分以下に下落しても事業を中止しなくてはならない理由はない。事業が破綻することはない。過去のバブル崩壊では株式相場の動因変化に伴って金融市場の混乱や「貯蓄病」の増加や経済活動の急速な縮小を伴った。これは市場の外にも波及する。
貯蓄は経済の流れからの「漏出」であり経済を縮小させる。今のところこのような兆しはないように思う。グロース株は高値から10%下落したが、バリュー株の下落は4~5%である。証券市場全体の崩壊というわけではない。アマゾンやアップルなどは事業拡大のための資金を自社の内部資金でまかなっているため自社株が下落しても事業を削減する必要はない。株価下落は個人の経済行動に及ぼす影響は07年夏に生じた住宅価格の下落よりもはるかに小さい。0金融がだぶついている。そういう企業が経済が弱まってもそれを乗り切る力があると想像できる。そうするとグロース株が割高だったことがバブルだとしてそれがはじけても多くの影響は2007年夏のサブプライム問題の破裂や2000年春のITバブルの破裂や1989年の日本の不動産・株バブルの破裂等々は意味が違うと思う。証券市場だけの問題だと思う。

【今週号の目次】
はじめに
第1部 当面の市況

(1)トランプがコロナ感染、日経平均は一瞬220円安、NY先物500~300安で推移
(2)米大統領選、初の直接対決、トランプ・バイデンの「痛み分け」、「アメリカ合衆国の黄昏」か? アメリカの分断を写す混とん状態を象徴、アメリカの将来像に陰りが出てきたとも見える
(3)勝者のいない大統領候補者討論会の1回目――「子供の喧嘩」「討論でなく口🄱論」、「批判でなく非難の応酬」
(4)日本時間で30日、米大統領選のリスクが再認識され始めたが直ぐ消えた
(5)結局、当面の市況はどうなるのか
(6)年末の日経平均はどうなるか、強気派と慎重派の意見を要約する
第2部 経済指標に強気シナリオと慎重シナリオの両面あり
(1)「炭鉱のカナリア」鳴き出したか?
(2)日経42種が9月末に5ヶ月ぶりに低下幅を拡大した
(3)今期前半期4月~9月は日本株は33年ぶりの上昇
(4)米株高に息切れ感、「炭鉱のカナリア」泣き出す、一方日本株では下値警戒感が薄らぐ
(5)日本株に下値不安が後退
(6)景況感悪化に歯止めがかかった
第3部 中長期の見方
(1)菅政権への期待
(2)菅政権の経済政策の根幹が見えてこない
(3)菅総理の基本スタンスが見えない
(4)菅政権は「ポスト安倍」を払拭しなければならない。「菅は菅」なのだ。「ポスト安倍」ではない。ポスト安倍は総裁になるまでの便法だったのだろうから早めに払拭すべきだ
(5)黒田日銀総裁は続投する—‐今後も異次元緩和による金融緩和は少なくとも日本は続けていく
(6)新政権の下での日銀の動きはどうなるか
(7)黒田日銀総裁はデフレスパイラルを止めたという功績を持つ、しかし…
(8)2020年の世界経済の実質成長率
(9)今の米国株のバブルをどう見るか?
第4部 読者との交信蘭
(1)K様からの「JT株についての」ご質問
(2)H様からの、「三菱銀行、JT株について」のご質問
(3)埼玉のK様からの「アメリカの大統領選挙、国内総選挙、配当権利落ち後について」のご質問
第5部 既報で「トランプ当選」を述べた部分
20年7月5日号、第2部(5)トランプとバイデン
20年7月12日号、第2部(11)トランプ大統領再選なるか
20年7月19日号、第2部(3)トランプかバイデンか
バイデン当選の可能性-バイデンならNY市場は一旦混乱


【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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