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【投機の流儀 セレクション】株がヒトを変える

新NISAが1月から始まった。
1.1800万円の生涯投資枠ができた。
2.非課税期間が無期限になった。

失礼な憶測ながら、投資初心者の多くは、目的やライフプランに即した資産運用ができていない人が多いと思う。本稿の読者の皆様はお子様に基本的な方針を教えておくべきであろう。もちろん、そうしておられる方が多いだろう。
「例えば、毎月3万円積み立て、運用利回りを年5%とすれば、20年後には1190万円となる。40年後には4350万円となる」(日経ヴェリタス紙1月7日号)。

人生100年時代と言われるようになり、現役時代から資産を自ら育てることが老後の生活に大きく影響することをご子息ご令嬢たちは意識していないかもしれないが、これを読者の皆様は根気良く意識させることも肝要であろう。人様のご家庭のことで余計なことを言ったが、ここは大事なところである。

私事に亘って恐縮だが、筆者の次男(53歳)は「細かいことは分からないので一番発展しそうな国はインドだと見立て、月に1万円ずつインドに投資している」という。これは筆者も賛成だと言った。また、GMとUSスチールは既に「アメリカの象徴」でないことは承知しているが、GMとUSスチールの株を月に3株ずつ買っているとも言っていた(アメリカは1株ずつ買えるのだそうだ)。50代からでも遅くはない。

彼は30歳代の半ば頃、自社の従業員持ち株制度で4000万円の利益が出た。「それは『ビギナーズラック』というものだから必ず大損する。よって凍結するのが賢明だ」と筆者が父親として諭したら「国債に凍結する」と言うから「ダメだ。国債を解約して株を買いたくなって大損する」と諭した。すると、意外に素直に父親の言うことを聞いて、古い建売住宅を買って「そこに棲んで凍結し、後年にカネを貯めて建て直す。今は地面だけ買うつもりで買う」というから大賛成だとした。

決して賢い青年ではないが、この件だけは上手く行き、私からの生前贈与(子供が自宅を建てる場合は1500万円まで無税)を使って、ローンも使って新築した。拙著に「ここに或る青年がいた」という書き出しでビギナーズラックについて半頁ほど書いた話は、実は次男の事である。父親に対して万事反抗的だった次男が、その一件の後は父親に対して非常に素直な人になった。株はヒトを変える。

総理をも恐れさせた「財界の総理」と言われた土光敏夫氏が石川島重工の社長に就任した時、有り金をはたいた上に借金までして、ぼろ株と言われていた石川島重工の株を買えるだけ買った。その事実を総評傘下の先鋭な労組の委員長であった柳沢錬造(のち参議院議員)の知るところとなり、「今度の社長は自社と運命を共にする気だぞ。
ストばかりやってないで、労使協調して、良い会社にしてみようではないか」と労組全員に呼びかけた。それが、石川島重工が立ち直った契機となった。この話は、拙著「投機学入門」(講談社α文庫、2007年刊)の最終章「投機家列伝」に株がヒトを変える事例として述べた。

NISAは内容が充分に拡充されて、若者の資産形成に活かしやすくなった。日本は米英に比べると、金融経済の教育が20〜30年遅れているように思える。  
筆者が担当する国際金融論の講座で百余人前後の聴講生に訊いてみると、400年前にヨーロッパで株式会社が発明され、有限責任法が出来て、海上保険が出来、大西洋を渡る船団が組織されて「信仰の自由を求めてメイフラワー号でアメリカに渡った」と歴史では教わっているが、実はインディアン交易で一旗揚げようという野心的な人々も多くいて、それがアメリカ型資本主義のルーツであり、その船団も組織もアメリカ移住組が買い取ってしまった。
これがM&Aのルーツであり、投資対象は株式そのものだったということを知っている人は半数もいない。つまり、小学校・中学時代に「メイフラワー号で信仰の自由を求めて、新大陸へ渡った」ということを習うだけである。 
筆者の場合もそうだった。船の名称なんてどうでもいい。米英の資本主義の発生とその本質を、基本的に社会科の中に組み入れていくべきだ。

【今週号の目次】

第1部;当面の市況
(1)こういうことがあっては、新しく始まるNISAにとって宜しくない。
(2)NISAと円安
(3)今年は売り手に回る日銀
(4)日銀短観は景気回復を示している。

第2部;読者Y様との交信(個人投資家とNISA)及び、お知らせ

第3部;中長期の見方
(1)今年は日銀利上げの年
(2)株式市場の大きな流れが当年のGDPの流れと無縁ではないとすれば、2024年は日本株の上昇に「踊り場」と「陰り」が訪れるであろう。
(3)インフレが2024年の経済と株式市場を左右する。
(4)CHANGEはチャンスに通ずる=大変化は大好機になり得る。
(5)「2024年の世界の10大リスク」を発表した。その第1位は「(トランプによる)米国の分断」である。
(6)「高圧経済」
(7)東南アジア諸国は漁夫の利を得る立場にある。
(8)日本製鉄の分岐点
(9)「もしトラ」が実現したら・・・
(10)米中の覇権争い、最大の焦点は半導体だ。
(11)株がヒトを変える
(12)世界の投資家は、日本の非上場株市場に注目
(13)世界情勢を一言で要約すれば・・・
(14)日米の金融政策の逆行期間は意外に長く続く。
(15)渡会(わたらい)教授からの年賀状 

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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『投資で勝ち続ける賢者の習慣』
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『投機学入門 不滅の相場常勝哲学』(電子書籍)
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『会社員から大学教授に転身する方法』(電子書籍)
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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