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【投機の流儀】コロナ禍のもとでの東京五輪、良きにつけ悪しきにつけ、いずれにしても現代史に大きな事変として刻まれる。株式市場に無縁ではない

コロナ禍での五輪開催は「あうんの呼吸」とか「空気が決める」などという日本の意思決定の歴史を繰り返しているように見える。既報で述べたが、第2次大戦の開戦や戦艦大和の出撃命令などは誰が見ても明らかな失敗の結果を予測しながら誰も止めることができなかった。そして、予想通りの結果になった。
英国では6月21日に予定されていた規制緩和を延期することが決まった。「その延期の発表時には、専門家の見解が最新のデータとともに示され、それを参考に政治的決定が下されたことも伝えられた」(英オックスフォード大学教授苅谷剛彦氏、週刊東洋経済誌7月3日号に寄稿)そうである。
それでも誤りは生まれ得るであろう。専門家の間での見解の相違もあるだろうし、政治家間の受け取り方の違いもあるだろう。しかし、少なくとも情報の透明性とか決定のプロセスの透明性という事実はクリアされている。
米FRRのFOMCは昔から内容が公開されていたが、日銀の政策決定会合は少なくとも三重野康の時代には内容は公開されていなかった。英国の決定が正しいと言っているわけではない。ただ、どういうプロセスで決めたかがクリアされているということだ。
専門家が認める学術誌に掲載されている信頼に足る記事とか、あるいは信頼おける専門家のお墨付きの意見とか、結論に至る手続きを明示しているか、透明性が確保されていればそれはそれで日本の場合と大いに違う。

英国が「国益のためには何でもする」ということは近現代史を見れば歴然としている。
これはアフリカの奴隷を北米大陸に運んで大儲けし、そのために栄えた港町が英国の大都市となり、そのくせ、今は人権尊重や民主主義を唱えている。英国ほど国益のためには何でもやり、二枚舌を何回も使い、そしてコトが終わった後は人権尊重や民主主義を謳う、こういうことはしっかり銘記しておかないと筆者などは少年時代から夢中になったものは全てが英国発だったから大いに憧れの気持ちを持ってロンドンからケンブリッジまで、そして1時間以上かけてスコットランドまで飛行機で行き、さらに1時間以上かけてゴルフの発祥地とされるセントアンドリュースまで行ってオールドコースでプレーしたこともある。30年前の話しであるが。しかし、英国が再び日英同盟を結んで中国に対して対決姿勢を鮮明にして最大の空母クイーンエリザベス号をインド太平洋地域へ派遣する、こういうことを大いに喜んでいるが手放しで喜ぶべきではないということは自覚していたい。

【今週号の目次】
第1部 当面の市況

(1)週末は米国3市場は最高値更新したが日本株は上値は重い
(2)6月いっぱいをざっと振り返れば
(3)企業が想定する2021年度の円ドル相場は106.7円と想定
(4)米金融政策読めず個人投資家は短期売買に傾斜
(5)景気敏感株であるし時には一般株価より先行性を持つ株である海運株の行方―「裏の裏は表」か
(6)米金利上昇と日米株式市場のグロース銘柄に回帰したが……
(7)五輪に執着する首相、右顧左眄する答弁、これでは秋の衆院選は(自民党が政権党であり続けることには変化はないだろうが)大幅に議席数を減らすであろう
第2部 中長期の見方
(1)FRBの資産購入額の段階的な減額「テーパリング」
(2)「菅の顔」で選挙が勝てるのか
(3)自民党員数の盛衰
(4)米中対立と「二階おろし」と菅首相の危うさ
(5)コロナ禍のもとでの東京五輪、良きにつけ悪しきにつけ、いずれにしても現代史に大きな事変として刻まれる。株式市場に無縁ではない
(6)コロナ規制緩和策を延期するプロセスについて英国に学べ、と言いたげな表現をしたが、「英国かぶれ」は甘い
(7)日本経済の力
(8)新たな米ソ冷戦は誰も望んでいない
(9)「最低金利制度」を設ける案
(10)日欧米で超低金利が続く背景
(11)日本を追尾国と仮想し自国を被追尾国の位置に置いたレーガン政権
(12)経済学者も最近は財政政策必要論が広まっている
(13)中国共産党の一党独裁政治は不死身か?
第3部 読者との交信欄


【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
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