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【投機の流儀 セレクション】「超金融相場」、4日連騰1348円高

「超金融相場」、これはアナリストやストラテジストが今から常用する用語になるであろうが、要するに「大バブル」なのだ。しかも、平成バブルと違って自動車・絵画・宝石・ゴルフ会員権等のような巷に溢れ出ずに金融市場内でマグマとなって蠢いている。
本稿の既報で時に触れてその実態を述べてきたが、我が国の「大相場」と言われるものはその全てが、国家が何らかの緊急・異常事態を解決するために世の中に流出させた超金融緩和がもとである。全ての大相場がそれである。表面から見ると海外投資家がドッと流入して売買金額の7割を占め、それが株価を上昇させたということになっており、それは事実であるが、底流には事件処理(★註)のために国家がつくり出した超金融緩和がマグマとなったことが淵源だった。今現在もそれである。コロナ異常事態に衰弱化する経済を救うための超金融緩和のマグマである。
(★註)さかのぼって復讐してみよう。今回の相場はコロナ不況の処理のための過剰流動性のため。アベノミクス相場はリーマンショック処理に対応した超金融緩和のため。小泉相場はITバブル崩壊の処理のための緩和と不良債権処理のための公的資金投入のため。ITバブル相場は97.98年の金融危機に対処した金融緩和のため。平成バブルは貿易摩擦で過酷な苛めに遭遇した日本経済のために澄田元日銀総裁が低金利政策を長期間取り続けた過剰流動性のため。列島改造相場は前年の急激円高に対処するために出した過剰流動性のため。「いざなぎ景気相場」は「昭和40年不況」に対処するための大型財政出動のため。
この通りなんらかの衝撃を処理するために国が出した札束が過剰流動性となってバブルのマグマとなり、そこに海外勢が政策スローガンに魅かれて流入し大相場となる。この経緯は脳裡に置きたい。故に今回の8000円高は、まさしく、「コロナ不況対策バブル相場」だということになる。

先週は場の立った4日間の4日が全て陽線で4日合計で日経平均1,348円の幅を上昇し、1,000円の大台を二度変えてアベノミクス相場の「老年期相場の大天井」と本稿では見なしてきた2018年10月2日の高値(その100円下まで何度も挑戦したが抜けなかった)を今回は素通りで突き抜け、91年11月以来の「29年ぶりの高値」に届いた。

この環境下(103円台という円高・大統領選挙直後の「忌わしい記憶」・コロナ感染拡大・大幅な決算悪)において株価だけがこの盛況は「需給に勝る材料なし」を教科書通りに表現している。

これだけ派手に上がっても25日線からの乖離は1%強でしかない。また、騰落レシオは82%、売買金額は連日2兆円台であり、市場内部の尺度から言えば少しも過熱の域値に入っていない。

繰り返すが、日本の銀行には今法定準備率の34倍の札束が眠っている(日銀発表の数字だから間違いない)。この過剰流動性は日本史上最高であり、世界でも最高である。ちなみにアメリカや欧州は12~15倍だそうだ。日本は34倍。繰り返すが、平成バブルと違ってこのバブルは金融市場外へ出て、車や宝石を買いまくるということはなく、金融市場内だけにとどまりマグマとなってとぐろを巻いている。既報で繰り返し「これはバブルだ」「これをバブルと言わずして何と言おうか」と言ってきた、先週はその強さが株式市場に集中的に表れたに過ぎない。

「29年ぶりの高値」とマスメディアは言うが、29年前と言えば91年11月で、これは本稿で言うところの「2世紀をまたいで5分の1になった株価」(89年12月の3万8,915円→09年3月の一瞬7,000円割れ)のプロセスの下降開始から2年目の「下降トレンドの駆け出し時代」の値であり、それと比較する意味は全くない。
マスメディが「29年ぶり、29年ぶり」と重ねて騒ぐだけだ。
しかも、その翌年春、銀行株が一斉大暴落して平成不況は金融不況であるというシグナルを市場は送った。その大下降相場の開始直後のことであるから、「この29年前」と比較することはマスメディが話題として騒ぐだけで全く意味がない。

【今週号の目次】
第1部 当面の市況
(1)「超金融相場」、4日連騰1348円高
(2)米大統領選に思うこと
(3)「11ヶ月間隔の壮大なWトップ形成」か「新型相場の中段」か
(4)4日間で1,348円高、「コロナバブル相場」の活況
(5)従来、大相場は事態処理のために国が出した過剰流動性がマグマになって起きた
(6)大統領選と市場
(7)決算悪を乗り越える過剰流動性
(8)当面の市況:先週は4~9月期決算の本格発表
第2部 中長期の見方
(1)罫線から見ればこうなろう
(2)キャッシュポジションを高めにとろう
(3)21年3月末までに限って見ればどうなるか、各氏の意見を要約する
(4)「コロナワクチンの開発・普及」というカイ材料と並列で「過剰流動性の出口戦略の開始」というウリ材料が待ち受ける
(5)欧州、コロナ第3波で二番底か
(6)欧州経済、再びマイナスに。EUの欧州委員会が10月~12月予想を下方修正
(7)中国GDP、15年で倍増計画
(8)判断と解析
第3部 読者との交信蘭
昔からの読者であられる千葉のY様との「途上国通貨」についての」交信

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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『投資で勝ち続ける賢者の習慣』
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『投機学入門 不滅の相場常勝哲学』(電子書籍)
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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