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【投機の流儀 セレクション】「世界4位の移民大国、日本」としての実情と今後の在り方

生産年齢人口が日本は減り続けているが、働き手の数は全く減らなかったどころか、日本は過去最多の水準で推移している。労働移民の年間受け入れ数では、日本は世界第4位である。アメリカ・ドイツ・オーストラリアの次に続く。
そして、移民合計に対する一般滞在型移民の比率も日本はアメリカ・ドイツ・オーストラリアに次いで第4位である(国立・社会保障人口問題研究所の直近のデータによる)。永住型移民を見ると、先進国全体で毎年500万人新たに入国している。そのうち、日本が受け入れているのがかなり多い。

日本政府は外国人の日本永住も視野に入れて、非常にオープンな移民政策をとっているにもかかわらず、閉鎖的な政策をとっているイメージが一般的に持たれている。マスメディアが間違いを誘導している。

移民反対論は筆者の知る範囲で言えば情緒的な事由に多く、外国人との付き合いが少ない人に多い。筆者の親しい友人で大手ホテルの経営者がいるが、ネパールから多くの移民を受け入れて使用人として雇っている。彼らはアーリア民族であるから、まつ毛が長く、目が大きく、鼻筋が通っていて、男性も女性も綺麗な顔をしている。そして、極めて真面目に働く。日本の永住権を取りたいのだ。
筆者の友人はその使用人であるが、多くの移民を使う立場になるまでは「移民は絶対に反対だ、風俗が乱れる、犯罪が増える、識字率が低下する」などと言っていたが、移民を多く受け入れて部下として働かせるようになってからは「移民大賛成」に180度転換し、アーリア民族に限らず、多くの民族を移民させるべきだという意見に180度転換した。
筆者は日本ウズベキスタン協会で多くのウズベキスタン人(知識人の多くは人種的にはスラブ民族でロシア人に近い)と付き合って、東洋からも西洋からも移民受け入れ推進論者に変わった。人口減少に直面した日本の活性化は移民しかない。

このように多くの外国人と付き合うことによって、移民の悪いところだけを見て反対するという情緒的なものがなくなり、良いところも悪いところも見えるようになるのだと思う。厭な部分にだけ視線を当てて、拡大鏡を当ててみるのは間違いだ。
例えば、ニューヨークのハーレムとかサンフランシスコやシンガポールのチャイナタウンとか新大久保の韓国人街とか、工業地帯の中東人とか、そういうところだけを見て移民に反対する。特殊な雰囲気を見て移民を反対する。これは島国根性以外の何物でもない。

また、移民と難民を区別できない人もいる。国民というのは一定の民族がそこに居て、住む国土があってこそ「国民」と言う。したがって、パレスチナ人やクルド人は一定の民族の群居はあるが、領土が決まっていないから「国民」と見なさず、パレスチナ人やクルド人も国連は国家として見なしていない。移民と難民と区別して、筆者は移民推進論を説いている。マスメディアも意外に幼稚である。我々全員が移民の末裔であることを忘れている。アメリカのように大統領が移民の三世四世ならば移民はすぐ身近にあるのだが、我々は遠くの存在である。

30年ぶりにデフレマインドがインフレマインドへ大きく変化しようとしているように、移民に対する国論を盛り上げるべきだと思う。政府は意外にオープンな移民政策をとっており、そして実績もある。移民とは違うが、観光客の数は安倍政権時代の入国規制緩和によって何倍にも増え、彼らの落とす消費量は年間7兆円にのぼるからGDPの1%以上を占める。

日経新聞が7月4日に行った経営者に対するアンケートによると、人手不足に対してどのような対策をするかに対して、学卒・院卒の採用と中途採用の強化を挙げているが、次に外国人採用強化を挙げている。圧倒的にこの人数は多い。そして、今後3年間の外国人の採用について意外と多くの賛成論が寄せられている。

シンガポールは日本の約2倍の一人当たりGDPを持つ豊かな国ではあるが、年金制度は全くないし、介護制度もほとんどない。シンガポールの金持ちたちの願いは、そろって日本国籍を手に入れることだと筆者の親しいシンガポール通は筆者に何年も前から話している。シンガポールの金持ちが日本にやってきて、筆者が言うところの「労働移民」ではなくてもいいから(労働に就かない者は帰国してもらうという意見を筆者は持っていたが)、シンガポールの金持ちが日本にやって来るならば日本の高い相続税を払ってくれる。だから悪い話しではない。
無理に労働に就かなくてもいいではないか?宗教上の問題もないと思う。シンガポールから金持ちを移民させるのは良いことだ。ちなみにシンガポールの一人当たりGDPは8万ドルだから、日本の2倍以上だ。

【今週号の目次】
第1部;当面の市況
(1)SQ済んで、日は暮れて─今年最大の下げ幅
(2)7月前半の動き─12日(金)のSQ日から様変わりした。
(3)世界の半導体関連企業の株価状態を「バブル」と評価するか?
(4)ドルで見た日経平均は3月より安い。
(5)信用買い残高が5週間ぶりの低水準
(6)個人投資家の信用評価損益率、3ヶ月ぶりの好環境─週末急落前
(7)「日経平均・TOPIXともに、最高値更新の後どうなるか?」と思っていた矢先に整理局面が来た。
(8)新NISAの人気銘柄、個人投資家が最も買いたがっている銘柄のNTT(9432)について─逆張りというのは価格の逆だけでなく「世相の逆」を張るのである。
(9)日立製作所(6501)躍動─日本の高度成長期のシンボルだった。

第2部;中長期の見方
(1)日銀は追加利上げの構えは解いていない。
(2)「脱デフレ」で問われる企業の「価格設定力」(つまり、値上げできる力)
(3)マインドの変化こそ、最重要だ。
(4)日本経済衰亡論を駁す─人口が減って栄えた国は古代ローマ以来ないことは事実であるが、日本の生産年齢人口が減っても、働き手の数は過去最多になっているという事実を見よう→移民推進論
(5)「世界4位の移民大国、日本」としての実情と今後の在り方
(6)外国人観光客が過去最高となっている─消費活動を通して、GDP成長に大いに資する。
(7)今さら日本人論ではないが・・・
(8)中国経済の一部に改善が見られるが・・・
(9)中国経済、回復か?停滞か?
(10)企業に「環境提案」をすることは、特例ではなくなってきた。
(11)昨年からの明確なインフレ基調の定着は、企業にとっては財務戦略の転換を迫られている→「成長と分配の好循環」は進む。
(12)「好循環の流れに変わりはない」インフレは将来が明るい。デフレは将来が暗い。
(13)歴史ある古い会社が急成長する事例

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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『投資で勝ち続ける賢者の習慣』
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『投機学入門 不滅の相場常勝哲学』(電子書籍)
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『会社員から大学教授に転身する方法』(電子書籍)
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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