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【投機の流儀 セレクション】大相場の終焉の大底にせよ、中間反落にせよ、底値の付け方には一定のパターンがある。AIがあろうが、なかろうが、人間の思考法に古今大きな変化はないからだろう

「動画」で底値の付け方についてのご質問があった。実際の実例をパネルで示して説明したが、ここでまとめておきたい。

人間の思考能力は2000年前からほとんど変わっていない。2000年前に1人のユダヤ人のことが「聖書」として世界のロングセラーとなり、2500年前の一中国人の日常の言動が「論語」としてロングセラーになっている。2500年前からヒトの思考法に大差はない。

ところで、大相場の終焉の大底、または中間反落の底値、いずれにも四つの型がある。この四つ以外にはない。頑固にこのように決め付けることによって、柔軟性が失われるかというとそうではない。この四つの型を想定していれば慌てないで済む。必ず、この型のいずれかに入るからだ。

まず、四つの型を挙げておくと、底値の付け方として1.V字型 2.ダブルボトム型 3.トリプルボトム型 4.鍋底型、この四つである。大天井の付け方についても同様である。この四つは大底であっても、中間反落の底値であっても、共通して言える。

具体的な例を挙げよう。
仮称コロナ相場である(コロナ対策で放出した過剰流動性により、コロナ回復後の姿を先取りして想定した相場で1.9倍になったから、一つの大相場としよう)。これの大天井はダブルトップで、その二つの頂上価格の価格差は0.66%しかない。これの大底の付け方は典型型な鍋底型大底であって、2022年いっぱいかかった往来相場である。そして、23年春の28000円から1.5倍になったところが現在の「日本のメガトレンドを買う相場」の中途である。

それ以前に遡ってみれば、アベノミクス大相場の中間反落は典型的なダブルボトムである。2016年2月12日と2016年6月24日では価格差はゼロである。1円違わないダブルボトムだった。コンピューターのプログラムトレードが進んでいる。今日こそ、こういう典型的なものが現れるのだろう。機械的にその価格帯に買い値を仕掛けておくのであろう。

アベノミクス大相場の終わりの大底は劇的なV字型であった。20年3月19日のV字型は10年に一度もないだろう。これは元々、日柄から見てもトリプルトップを付けて下がりたがっているところへコロナショックが来た。そして、アベノミクス上昇分の16000円幅の正確に半分の8000円を下げて、16500円で大底形成の儀式を終えた。これが2020年3月19日である。

この時、25日線からの乖離は20%・騰落レシオ40%・信用建玉の評価損過去最大・VIX最大・PER10倍・PBR0.8倍となったから、何度も自慢するように言うが、本稿では「三尊天井の時に売って換金しよう」と長く言ってきたのは「この日に買うためだ」と檄を飛ばした。これが本稿の20年3月15日号だった。

ちなみにアベノミクス大相場の大天井は逆三尊、いわゆるトリプルトップである。三つの天井の価格差は0.7%しかない。これが2018年1月・10月、2020年1月、この三つで価格差は0.7%しかないトリプルトップを形成した。

その前に遡ると民主党時代の低迷期の大底は鍋底型であり、2012年いっぱいかかった。
その前の小泉相場の大天井はダブルトップである。そして、その小泉相場の途中でも中間反落があった。これは鍋底型中間反落であって、2004年いっぱいかかった。

また、その前に遡って「失われた13年」の大底は見事なV字型であった。何年に一度もない。小泉相場の終焉の大底はダブルボトムであり、リーマンショックがあったから明確なダブルトップを付けて価格差は1.0%である。2008年10月と2009年3月のダブルボトムが1.0%価格差だった。

このように振り返ってみると、V字型・ダブルボトム・トリプルボトム・鍋底型の大底を付ける。そして大天井も同様である。これが逆になるだけだ。
型に嵌めて窮屈に考えると言うのではない。武道でもスポーツでも基本の型を重視する。その「型」から考えて、応用動作の柔軟性に移る。「型あって型なし」という新陰流の「無形(むぎょう)の位」である。

【今週号の目次】
第1部;当面の市況
(1)史上2番目の下げ幅2216円、但し発射台がブラックマンデー暴落より1万円以上高い所から始まったのだから、下げ率にしては比較にならない。
(2)まだ、1000円近いノリシロがある。
(3)7月はこんな相場だった。
(4)30日・31日に日銀の金融政策決定会合があり、市場には利上げ観測があったとおりの0.25%利上げが決まった。
(5)大相場の終焉の大底にせよ、中間反落にせよ、底値の付け方には一定のパターンがある。AIがあろうが、なかろうが、人間の思考法に古今大きな変化はないからだろう
(6)「敦賀原発2号機(福井県)の再稼働を認めない」─初の不合格
(7)野村證券が全3部門で純利益3倍─証券会社の山場は、いつも大天井の2年前に来る。
第2部;中長期の見方
(1)「成長と分配の好循環」は、概ね順調に回転しつつある。
(2)デフレ離れ、若者から
(3)「賃上げ景気の実力」─企業の旺盛な設備投資意欲が、日本経済の歯車を再び回す起点となる。
(4)日本株の「PBR1.5倍『鉄壁の天井』」であるが、日本市場のストックマインドは健在
(5)G20閉幕、超富裕層課税へ声明
(6)日経平均8日続落は半導体売りが先行した─しばらくは日柄整理、外部要因によって値幅整理の局面ありとするところ
(7)円安スパイラルを脱するには時間がかかる─三つのことを成し遂げなければならない。
(8)未だ早すぎるが、いずれの日か考えるべき問題─中長期的な株安時代を迎えたら、どう対処するか?
(9)日鉄(5401)と東電(9501)─はっきりしない点に仕手戦を含んだ妙味がある。
第3部;読者との交信蘭
8月2日(金) 読者M様との交信
株より儲けやすい「一流債券(AAA格のモノ)を三流通貨で買うという方法」

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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『投資で勝ち続ける賢者の習慣』
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『投機学入門 不滅の相場常勝哲学』(電子書籍)
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『会社員から大学教授に転身する方法』(電子書籍)
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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