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【投機の流儀 セレクション】「悪材料出尽くし」の後にどうなるのか、不分明だ。今は、アベノミクス相場の始動期と真逆の状態だから・・・

「『悪材料出尽くしの日本』を買う相場」「価格帯調整ではなく、スピード調整だ」と6月11日号で述べてきたが、一点考えるべき点はある。「平均株価の居所」が高すぎるから、それの是正での急落という意味ではない。
ということは、マクロではGDPの動向、ミクロではPER・PBR・利回り等が諸外国に比べて安いなどの点で、その判断は適切ではあると思う。

しかしながら
1:「悪材料出尽くしの日本」と言っても「これから日本はどういう反発をするのか」。「悪材料が出尽くした後で、日本どうなるのか」という見通しについては分明でない。

2:アベノミクスの始動期の状況と現在の状況は、マクロから見て正反対な点がある。当然、金利動向だ。アベノミクス始動期には「日本経済を取り戻す」を政策の中心として、そのために「三本の矢」を用意し、第一に大胆な金融政策を謳い、デフレ脱却のために大規模な金融緩和に動いた。史上例のない方法まで用いて「黒田バズーカ砲」とまで言われた。

今度は金融政策の方向が全く逆だ。植田総裁は必ず金利を「正常化」に戻す。正常化ということは「今は異常だ」という意味である。将来、金融は引き締めに入る。そうすると、当然に金利は利上げに入る。これは、方向がアベノミクス時代と全く逆だ。利上げに入る国は通貨高となる。アベノミクス時代は通貨安方向だった。今度は通貨高方向になる。逆方向だ。

もう一つある。
米景気が遅くとも10月〜12月期には後退期に入る。中国と並んで輸出の最大顧客の一つである米国が後退期に入る中で、しかも輸出の最大顧客である中国が労働人口減少で長期的な停滞に入る。

以上、述べたような環境からすれば「悪材料出尽くしの日本」とは言っても、今後の「V字型回復」が可能か否か、これはスピード調整後の保合期間が続けば誰もが考えるところであろう。 
誰もが考えることは、既に市場には織り込まれている。それでいて、これだけ上昇したのだ。
したがって、そんなことは杞憂の範囲に入るという見方もないことはない。

しかし、裏の裏は表だ。だから、以上述べたような警戒心が横たわっていることは事実であろう。また、2年4ヶ月続いたレンジ相場の底値から言えば8000円上がった。これが「悪材料出尽くしの日本を買う大相場」の「青春期相場の完了」と見なせば、次の壮年期相場は「業績を買う、実勢を買う」ということになってくる。
そうすると、以上述べたような裏に回った考え方が的中する恐れがある。

【今週号の目次】
第1部;当面の市況
(1)市況コメント
(2)現在の日本株の状態
(3)「悪材料出尽くし」の後にどうなるのか、不分明だ。今は、アベノミクス相場の始動期と真逆の状態だから・・・
(4)FOMCを踏まえた上での当面のNY株
(5)「表の論理を裏付ける三つのRe」─これが実現すれば「業績相場」たる「壮年期相場」が来る。
(6)「日経平均、史上最高値更新も」
(7)日経平均の高値更新に対する警戒説
(8)「本格上昇が始まった日本株」に対する肯定意見と否定意見
(9)G7サミット終了後に支持率が上昇して株高、首相は伝家の宝刀をいつ抜くのか?
(10)日銀6月修正説が後退した。
(11)総選挙は株高になる確率が極めて高かったのに、市場は思考経路を喪失した。
(12)「33年ぶりの高値」と言うが・・・
(13)今の時価総額とGDPとの穏当性
(14)「上昇理由はいずれも怪しい。夏場に27000円へ下落も」

第2部;中長期の見方
(1)日本に限らず、世界各国が株高傾向─「裏の裏は表になる?」
(2)スタグフレーションの可能性を云うIMF、そこで植田総裁はどうする?
(3)いつ利上げに転ずるのか、日銀の悩み
(4)植田日銀、行く末は難路
(5)全体的な株価トレンドは、景気が「後退」に入れば「谷」を着ける前に株価は大底を突く。
(6)トルコリラの為替相場は、エルドアン就任時から約十数分の1になってしまった。一代で自国通貨を10分の1以下にした大統領は珍しい。       
(7)強権政治は往々にして、経済政策の失敗を伴う。
(8)トルコは経済正常化へ向かうか?

第3部;僭越ながら、一言   
(1)「当たり屋につけ」「曲がり屋に向かえ」は一理ある。
(2)「ツキが来た」は無意味

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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『投資で勝ち続ける賢者の習慣』
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『投機学入門 不滅の相場常勝哲学』(電子書籍)
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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