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【投機の流儀 セレクション】経済活動はリーマンショックを上回る規模で縮小し始めた

日本のGDPは昨年10~12月期に前期比年換算で▼7.1%、世界の時価総額は過去最高時(今年1月20日)から先週は▼22%となった。
イエール大学のシラー教授(ノーベル経済学賞受賞者)は経済条件によって修正を加えた10年間移動平均の一株当たり純利益でつくった「シラーPER」というものを開発し、それが過去100年間での超割高を続いていると警戒していた。その警戒水準は「25」であるが、世界恐慌の1929年とITバブル崩壊の2000年と14年6月以降今年2月までと、この3回が「25」を大きく超えていた。そこで所謂「シラーPER」というものの長期で見た時の価値があったのだが、シラー教授は自らその価値を否定するようなことを言い、「イエール大学の後悔」ということになってしまったのは残念なことだった。
イエール大学のシラー教授(ノーベル経済学賞受賞者)の考察したところの「シラーPER」というのがある。所謂「シラーPER」と呼ばれている。それによると「株価が高すぎる」という懸念があり、1929年の大恐慌の前の暴落前の史上最高値と2000年のITバブル崩壊の時の大天井よりも今の方がPERが高いという危険を示していた。今になってみれば結果的にはその通りであった。

ところが彼がそう言ってからしばらくNY株価の上昇勢いが止まらないのでとうとう12月にシラー教授は「トランプは異例のコミュニケーターだから株価は大幅上昇するかもしれない」という彼の主張を翻した。
これはちょうど大恐慌前のバブル破裂寸前に当時屈指の経済学の最高峰と称えられていたアービング・フィッシャーが“Stock Prices Have Reached What Looks Like a Permanently High Plateau .”(「株価は永久に高値にとどまる台地に到着した」)と述べ、この一言で彼は永遠に汚名を着せられた。
彼の死後73年経った今もイエール大学の後輩にあたるシラー教授も自らのPERを否定した「変節」は「イエール大学の後悔」として悔やみに残るであろう。

【今週号の目次】
第1部 NT倍率の異常高の修正が起きた――日経平均だけでは語れない市況に入った
(1)当面の市況:TOPIXと個別銘柄を見る市況になった
(2)当面の市況:アベノミクス相場の半値押しに達した。但し市況の内容は一変した――既報で述べた「異常NT倍率」の修正に入った。
(3)市場内容が様変わり;個々の銘柄別に見ていくべき市場となった
(4)証券取引所閉鎖論まで出たという
(5)「仕組み債」のノックイン水準を下回るリスク
(6)先々週末以来は市場で異常指標の総展示会
(7)信用取引の買い残がアベノミクス相場始動期と同額の水準に落ち込んだ
(8)当面は値動きが荒い展開になろう
第2部 政策の発動
NYダウ5日連続で毎日1000ドル超の下落、日経平均1週間で▼3,300円
(2)ECBと米の緊急経済大型対策
(3)欧米の巨額対策
(4)政策の発動
(5)3月16日の黒田さんは従前と違っていた
第3部 実体経済との関係
(1)経済活動はリーマンショックを上回る規模で縮小し始めた。日本のGDPは昨年10~12月期に前期比年換算で▼7.1%、世界の時価総額は過去最高時(今年1月20日)から先週は▼22%となった
(2)シラー教授の変節は「イエール大学の大後悔」
(3)中長期の見方:景気動向指数の先行指数は低下した
(4)アナリストの業績予想・9年4ヶ月ぶりの悪化
(5)オリンピック中止または延期するだろうが、そうすれば21年3月期の日本企業の決算は24%の減益
(6)昨年から本稿で「2020年のテーマは二つだ」と言ってきた二つの問題は自動的に回答が出た
(7)実体経済への影響
(8)証券・銀行のストラテジストの見方
(9)各社の株式・為替・金利の見方
(10)円ドル為替のトレンド
第4部 政局
(1)安倍内閣の支持率急低下、「綸言、汗のごとし」
(2)基本的にはトランプ再選か否かの結果は対立候補の問題よりもアメリカ経済が良いか悪いかによる。
(3)米国大統領選挙、トランプは再選され
第5部 読者との交信欄
(1)「体調問題で数年間、取引が出来ず残念な思いでおられた」という昔からの読者との交信(3月19日)
(2)Tさんと「PBRについて」の交信(3月20日)
(3)世田谷区のIさんとの交信(3月20日)
(4)昔からの読者で論客R・Nさんからのメール(3月15日)


【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。

ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
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