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【投機の流儀】魔の10連休

【お知らせ】
山崎和邦先生は3月7日(木)~3月16日(土)までイスラエルに行っており、不在の為、直近の相場動向に言及することができません。
よって、3月10日号、17日号は「罫線・資料版」を御覧頂き、内容を補足、対応させていただきます。何卒、御容赦下さい。

山崎和邦事務局

【今週号の目次】
(1)2000兆円の10倍(2京)に及ぶ債務の行方――誰もが予想しない巨大危機到来の恐れ
 ■「最悪のケースでの下値を想定しておく」
(2)「魔の10連休」
(3)所謂カリスマ経営の功罪
(4)株式投資は人のする全てのことと同じく運に作用される面が皆無ではない
【蛇足】シンクタンク・総研の経済予測は当たるか「すべての予測は予測はずれに終わる」(ウィリアム・シャーデンー)
 ■短期動向(加筆・文責:石原健一)
 ■米国市場『米中首脳会談への期待下支えも、その後の反動安には要警戒か』
 ■マクロ指標・相場循環区分『既に景気後退入りしている可能性も、逆・壮年期相場入りに備える』
 ■「青春期相場」で高値形成の銘柄群の買い方

(1)2000兆円の10倍(2京)に及ぶ債務の行方――誰もが予想しない巨大危機到来の恐れ

金融の膨張が続いた結果、世界の債務は2000兆円の約10倍(2京)に至った。
確かに、11年前のサブプライムの破綻、10年前のリーマンショックの時に比べれば金融システムの改善や金融政策の方法は進歩したことには間違いない。
また、銀行の手元流動性は余裕のある水準まで引き上げられていることも間違いない。
しかし、「故に危機が来ても乗り切れる」という結論に至るのはまだ早い。
手元流動性というものは危機になった途端に流動性を失うものだ。
90年代、確かに銀行は不良債権に呻吟した、が、多少の余裕のあった銀行も一斉に「貸し渋り」「貸し剥がし」に走った。
あれを想起すれば、手元流動性というものは危機が来た途端に流動性を喪失するものだということが分かる。
銀行は身動きがとれなくなるものだ。
我々は何々ショックと呼ばれる都度、市場機能が麻痺するのを見てきた。
金融の安定は中央銀行だけで出来る仕事ではない。
大きなショックが起こった時、金融システムの機能を破壊するようなことになったらば、金融システムの安定は中央銀行だけでできる仕事ではない。
これは政府全体の仕事である。
無論、中央銀行を含めて、時の政権、官僚、財務省のテクノクラート等の全体の仕事である。
その全体の能力がどうなっているかと言えば、必ずしもこの10年間で格段の進歩を遂げたとは言い切れまい。
確かに、日本銀行の幹部には優秀な人材がそろっているし、そのブレーンにも優秀な人材がそろっている。
おそらくFRBも同じであろうし、ECBもイングランド銀行も同じであろう。
しかし、次の危機が今まで経験のなかったサイバーテロや世界的な金利急騰など未経験なものが引き金を引いたとしたらどうなるだろうか。
このことに関しては中央銀行も政権も財務省テクノクラートも仮想事態を想定しての学習はしていないはずだし、今まで経験した以外の未曾有の危機(木)サイバーテロとか世界的な金利急騰とか巨大なファンドが軒並み破綻したとかいうような)そういうものに対処するシミュレーションもないと思うし、対処する能力があるとは思えない。
今、世界の金融市場は人類が経験したことのない未曽有な状態にある。
それは2京(2000兆円の10倍)の債務を背負ったということだ。
そしてサイバーテロの恐れがあるということだ。
そして世界中の金利が急騰する恐れがあるということだ。
こういうものに対する構えはFRBもECBもイングランド銀行も日銀もそのシミュレーションはつくっていないはずである。
では、こういうことを心配しているのは所謂杞憂であろうか。
必ずしも杞憂とは言えない。
トリプルAの格付けを付けたサブプライム債券(部分的にではあるがAAA格債が入っていた)が世界中に散らばって、それが破綻して仏パリバ銀行が破綻に瀕するなどということは誰が想像したろうか。
また、それがきっかけで世界の4番目の投資銀行(日本で言えば証券会社)が破綻するに任せてFRBも財務省も放置して破綻に任せたなどということを誰が想像したろうか。
その前にベアスターンズとか大手生保などの破綻には国家権力が手を貸して救済した。
もっと前には2人のノーベル経済学賞受賞者の主催する巨大ヘッジファンドLTCMが破綻した際にはFRBが音頭を取って「奉加帳方式」で救済した。
それでは何故リーマンブラザーズだけを放置したのか。
この政策の失敗を誰も予測しなかった。

■「最悪のケースでの下値を想定しておく」
2018年12月の短期突っ込み局面では、PBR1倍水準の下支えは効いた。
過去、リーマンショック、旧民主党政権時代には、PBR1倍水準が支持水準として効かなかった局面もある。
最悪のケースの想定はしておきたい。
リーマンショック級の調整局面までを想定し、寧ろ、この局面を迎えれば株式に全資産を振り向ける投資姿勢で臨みたい。
全体のPBR1倍局面は異常であり、長くは続かない。

(2)「魔の10連休」

標題の件は既報で既述した。
5月1日の皇位継承の休日に伴いゴールデンウイークが4月27日から10連休になる。
①日本の金融市場だけが10日間連続して休場となる上、②主要企業の決算発表時期が重なる。
決算発表の日数が減るから残りの平日に集中する。
この10日の空間を突いて投機筋が何か仕掛ける可能性が充分にある。
丁度今年の正月の連休の虚を突いてドル円が一瞬104円を付けて我々を驚かせた。
あれと同じことが為替相場や株式相場に起こらないとは限らない。
そこでちょっと大げさだったが既報で「魔の10連休」と言って警戒を呼びかけたのだ。
このことは喉元過ぎれば熱さ忘れる、であってはならない。

(3)所謂カリスマ経営の功罪

創業オーナー企業に優れた企業が少なくない。
筆者は何十年も前、野村證券の現職時代からそのことに気付き、社員の居心地の良さ悪さは二の次三の次として企業価値としてどうかという一点だけに目を向けたときに、創業系オーナー企業とサラリーマン社長の企業とでは、いずれかが株価が高いか、これを計測してみたらどうだということを野村総研(当時は野村證券調査部)の友人に提案したり頼んでみたりしたことがあったが、即座に断られた。
創業系オーナー系企業の株価が高いに決まっているというのだ。
そんな統計を出したら事業法人部や金融法人部に恨まれるというのだ。
彼らが営業に行っている大手企業はほとんど全部がサラリーマン経営者だ。
経団連銘柄はほとんど全部がサラリーマン経営者だ、したがってそんな統計を出したら、法人部や企業部が不都合になるはずだ、というのだ。
しかし、投資家としては、今現在でも創業オーナー系の企業を探せとか、カリスマオーナー経営者を探せとか、カリスマオーナー経営者に賭けてみよという意見は多い。
現に日経ヴェリタス2月17日号~23日号には1面から4面まではそれの特集であった。
ここで筆者がひとこと言いたい。
カリスマという言葉はここ30~40年前から流行りになっていて、カリスマ美容師だとかいうカリスマ経営者などという言葉は尊称または美称として使われるようであるが、本来カリスマという言葉はそうではない。
これはマックスウェーバー(だったと思うが)が支配力の3要素として、①合理的支配、②伝統的支配、③カリスマ的支配を挙げた。
そして、判りやすい例としては、政治学の初歩ではヒトラーを挙げる。
彼は、①の合理的支配としてはアウトバーン、現代で言う高速道路をつくり、物流・商流・軍事・兵站を効率化し、超インフレを強制的に治め、②の伝統的支配ではゲルマン民族の「血のミトス」を謳い、それを強めるために目の前に居て分かりやすいユダヤ人を虐げ、③のカリスマ的支配においては演説の天才的才能、美術学校を志願しただけあって軍服・ヘルメット・記章などのデザインの鮮烈さ等を身に付けていた。
しかし、カリスマというのは指導者としてあるいは統率者として決して褒められたものではない。
これは後任者に継承できる筋合いのものではないからだ。
その本人だけが持つ生理的な伝播力、生理的に発する影響力、個人固有の力であり、後継者や二代目に伝承したり教導したり社風として残せるものではなく、個人の力による。
その意味でこれは開かれた企業・民主的企業において真似るべきものではないし真似も出来ない。
こういうのは筆者が経営者の一端であった時代に自覚もしたし主張もしてきたことであった。
現に後継者が育たなかったりお家騒動が勃発したりする会社はほとんど全てがカリスマ経営者の会社である。
日本電産のように成長し大きく伸びるのもカリスマ経営者の会社である。
だが、これは投資の対象として見るのは大いに理にかなった一つの見方ではあるが、経営の在り方として学ぶべきものは少ない、というよりもあってはならないものである。

(4)株式投資は人のする全てのことと同じく運に作用される面が皆無ではない

皆無ではないどころか運の要素が大きい場合がある。
運とはランダムな出来事を自分のトクになるように使う準備ができているかということに他ならない。
自然科学者でさえも同様のことを言う。
パスツールはフラスコが壊れて偶然に見つけたことであるが、「運は日頃よく準備している者にしか訪れない」と言った。
筆者は昔からこの言葉が好きだった。
ただ、己の過去の出来事を振り返ってまったく偶然に思える数少ない出来事に特別な意味を見出すことはしてはならないとある賢人が説いている。
(★註)「『偶然』と『運』の科学」、マイケル・ブルックス編、水谷淳訳、SBクリエイティブ、2016年刊)

例えば筆者の父母は、もちろん年号は異なるが同月同日に死亡した。
その確率は365分の1である。
そして、妻の父母も年数は20年ほど違うが同月同日に死亡した。
この確率も365分の1である。
夫婦両方の父母が命日を同月同日に持つ確率は(1/365の自乗)だから13万3225分の1である。
この13万分の1の確率の2人が所帯を持って運命共同体を継続してきた。
この13万分の1という確率に意味はあるのだろうか。
これは天の配剤だろうか。
このようなことを書いても全く意味はないと述べているのだ。
意味がないどころかそういうことはしてはならないと述べている。
茶柱で占いをする人のやり方と同じである。
道路に落ちる雨粒のパターンは全て唯一無二だ。
同じパターンが一つもない。
意味を探ろうとして過去の歴史を振り返っても何の役にも立たない。
人間の脳は膨大な量のデータを振るい落として普通でないように見えるものだけを探し出し、そこだけに意識を向けたがる。
人は意味のない出来事に常に意味を見出したがる。
ヒトは、何もない所に法則を「発見してしまう」ものだ。
「半値押しは全値押し」とか「半値戻しは全値戻し」などである。
このことと似て非なるは次のことである。
全ての事実が得られていなくても結論を引き出すのが統計学の基本である。
御承知だろうか?テレビの視聴率は実は僅か200軒の家から構成される。
これが統計学的に正当とされる。
統計的推論というのが統計学の基礎にある。
積分を用いる場合が多い。

【蛇足】シンクタンク・総研の経済予測は当たるか

「すべての予測は予測はずれに終わる」ウィリアム・シャーデンーかつて経済シンクタンクといえば当代一級のエコノミストが集結する経企庁を指した。
民間のシンクタンクは昭和40年設立の野村総合研究所をもって嚆矢とする。
以来50年間にわたって筆者は、経企庁を含めてシンクタンクの、あるいは総研のエコノミストたちの経済予測がどのくらい当たるかということを執拗に調査追跡してきた。
社会通念としては、経済予測は当たることもあるということになっている。
実際には所謂シンクタンクや総研エコノミストの出す予測は当たっていない。
コイン投げの確率より悪い。
ちなみにGDP成長率の予測を例にとろう。
平成バブル後の89年~98年の10年間のGDPの実質成長率を平均すると1.94である。
これに対して筆者が対象とした20のシンクタンクと10人のエコノミストの平均誤差は1.8である。
1.94のものを予測するのに1.8の誤差があったのではハナシにならない。
実数の100%近い数字のブレがあるということになるのだ。
99年度GDP成長率について大手生保系の総研の誤差率は200%を超える。
しかもプラスマイナス逆方向にであった。
某大手銀行の著名エコノミストの予測はこれまたプラスマイナス逆方向に300%になるだろう。
この誤差はマイナスの誤差もあるのでプラスマイナス全部足すとヘンなことになるから、全部プラスに置き換えるために自乗して、その平方根を求めた(所謂「平均平方誤差」で、統計で言う最少自乗法の基礎となる)。
事実はこの通りであるが、当たらないというのは感覚的に言っている場合が多い。
これもまたもっともな場合が多い。
列挙するとおよそ下記の通りだと思うがいかがだろうか。

①旧経企庁の景気動向指数の一致指標(景気とともに動き景気の実感を表す)は12項目あるが、これは製造業の比重が高い。
そこで、サービス関連業や個人の景況感とズレることになる。
GDPは国の全ての経済活動を表す。
よって国民それぞれが自分の属している経済範囲のものではないケースが多い。
②公表のスピードが遅い。
よって、既に過ぎ去って何ヶ月も経ているので当時の実感がない。
③シンクタンクやエコノミストの予測は前提がいくつもあっての予測である。
その前提が崩れれば将棋倒しに予測理論プロセスが崩れて結果を誤る。
そうなったとき、そのシンクタンクやエコノミストはその前提が違った理由を述べ、その説明に終始する。
以前に本稿で「説明するが洞察しない人々」と述べたのはこれである。
④エコノミストと称される人々はその出身母体の影響を受ける。
⑤国民一般は現状や将来のことが気になるので予測が狂ったかどうかというような過去のことをセンサクすることに興味と関心を持って追跡する人は少ない。

大体、以上列挙したものが当たらない理由であり、かつ当たらなくともシンクタンクやエコノミストの予測が存続する理由だと思う。
だいぶ前だが、ダイヤモンド社から「予測ビジネスで儲ける人々」(ウィリアム・シャーデン著)という訳本が出た。
そのサブタイトルは「全ての予測は予測はずれに終わる」というのである。
そして、過去30年間の経済政策の最大の誤りの一つは予測能力の過大視だという。
そして予測として当てになるのは一日先の天気予報だけだという。
だが、経済予測としてよく当たってきたものは少なくとも3つ厳存する。
先行指標としては株価を見ていれば景気は読めるということは本稿でよく述べたが、その他にも二つある。
その一つは、旧経企庁(現・内閣府)の出す景気動向指数である。
これの下降・上昇という方向指示は、よく景気の実体を捉え得た。
少なくとも景気の大きな曲り角においては、よくその転換を指示し得た。
例えば平成不況への突入については政府が景気下降を認めたのは92年春だったが、景気動向指数はその1年前の91年2月に下降をはっきり示していた。
株価はそのまた1年前からだった。
もう一つアテになるのは日銀短観の業況判断である。
これは株価と同じく先行指標として良く当たってきた。
非常に単純な統計手法であるが、株式市場ではこれが重視され、日銀短観の発表になる日には兜町はしばしば右往左往するほどだ。
考えてみるともっともなことであろう。
そのアンケートの対象となる人々が設備投資や株式投資や決算を意思決定するのだから一番直接的な予測判断材料だということになる。

■短期動向(加筆・文責:石原健一)
―日経平均株価・騰落レシオ(25日)―
チャート上では、昨年12月安値を起点とした上昇トレンドライン(赤点線)と上値抵抗線の200日移動平均線が収束する4月中旬頃迄には、次の方向性が出やすい。

―個別銘柄動向―
2月5日の騰落レシオのピーク前後から、物色拡大が限定される中で「日経平均株価は上昇していても、自身が保有する銘柄は上昇しない」といった市場全体と日経平均との温度差が顕著となってきている。
26日の権利付き最終日を意識した電鉄株の上昇、依然信用買残重い銘柄の軟調、一方安川電に見られる需給改善銘柄のしっかり、指数寄与度の高い銘柄の上昇による日経平均株価の堅調など、様々の要因で各銘柄の動きにバラツキが出てきており、ポジションを持つべき局面では無い。
12月安値を下回る銘柄が出始めてきている点からみても、日経平均の保合い後の方向性は、下向きで構えていた方が無難であろう。

―日程―
今週、春分の日21日(木)から、先ず北海道、福井、神奈川、三重、奈良、徳島、鳥取、島根、福岡、大分の知事選の告示。
29日(金)には、41道府県議選、17政令市議選の告示となる。
選挙において、安倍内閣の経済政策の成果を強調する為にも、日経平均株価(のみ)の水準維持は重要となってくる。
統一地方選の投開票となる4月7日(日)、つまり4月5日(金)までは、一部値嵩株を吊上げることによって、価格工作の効く日経平均株価だけでも上昇させるといった思惑的な動きが見られ、日経平均株価と市場全体の乖離が広がる局面が続く可能性もあろう。

■米国市場『米中首脳会談への期待下支えも、その後の反動安には要警戒か』
3月27日前後(4月に延期の可能性も)に開催される米中首脳会談への期待は持続している。
ただ期待が大きくなるほど相場の戻りも大きくなり、12月安値からの米国市場の戻り大きいのとなっている。
相場の経験則では、実際に発表で、「現実」より「期待」の方がはるかに大きいものとなり、「現実」の発表と同時に「期待はずれ」「材料出尽し」となることが多い。
米中首脳会談開催までは、要人の発言に一喜一憂する場面もあろうが、「期待感の持続」が相場の下支えとなろう。
寧ろ、その後の期待先行相場の反動に注意したい。
更に、米国市場で4月から始まる1-3期決算は増益率の大幅な減速が予想され、足元のファンダメンタルズの悪化に市場の目が向かい始めた時に、期待先行の反動に拍車をかける可能性もあり注意したい。

VIXは低下傾向。
投機筋のVIX先物の売越幅は拡大傾向で、株価変動率低下と共に、昨年大きく相場を動かし話題となった「リスクパリティファンド」の買いが膨らんでいる。
裏付けを伴わない「期待先行」相場だけに、きっかけ次第では、相場急変となるリスクを孕んだ相場状況であることは注意したい。

先週末15日(金)の米国市場は、NYダウ+138ドル、NASDAQ+57ポイント。
朝方に発表された3月NY連銀製造業景況指数、2月鉱工業生産は、共に市場予想を下回り小動きであったが、米中通商交渉の進展が報じられ上昇幅を拡大している。
先週末の一日のみの市場の動きを見ても、現在の米国市場は足元の経済指標の悪化には目を向けず、米中通商交渉への期待が相場上昇の原動力となっていることが窺える。

■マクロ指標・相場循環区分『既に景気後退入りしている可能性も、逆・壮年期相場入りに備える』
先週11日(月)に、2月工作機械受注の速報値が発表された。
前年同月比は70.7と、5ヶ月連続減少。
前月比は87.5と減少傾向は続いている。
同指標の悪化傾向が続く中では、機械株の戻りも限定的となろう。
まだ先ではあるが、連動性の高い鉱工業生産の悪化を受けて、5月20日(月)8時50分に発表される2019年1-3月期GDP(一次速報値)への警戒感はかなり強くなることが予想される。
またマクロ指標悪化傾向の環境下で、ゴールデンウイークの10連休を迎える。
10連休への警戒なら、株価は先回りして動くだけに、新年度入り相場へは、期待より寧ろ警戒をもって臨みたい。

内閣府発表の1月景気動向指数では、景気の現状を示す一致指数が3カ月連続低下、基調判断は5段階中、上から3番目の「下方への局面変化」となった。
先行指数に下げ止まりの動きが見られず、一致指数の低下局面は当面も続く可能性が高い。

マクロ指標の悪化を受けて、一部エコノミストの間では「既に景気後退局面に入った可能性がある」との意見がでてきている。
本稿では、2018年前半から「景気に対する株価の先行性」を指摘し、現金ポジションを高め、次の好機に備えることを呼びかけてきた。
しかし後退局面では、今度は「景気の谷」に先行して株価は大底を形成、「不景気の株高」局面が訪れる。
今回の景気後退期間がどの程度になるかはまだ分からないが、いよいよ本稿で呼びかけてきた「本当の好機」を探る段階に入ってきた。
寧ろここからは、中長期の買い場を探る目線で相場と対峙してゆきたい。

―マクロ指標の悪化を受け、相場循環区分では実勢悪を織り込みにゆく「逆・壮年期相場」入り接近か―
過去の局面(赤点線枠内)からも、「大幅下落後、2ヶ月程度の中間反騰(2ヶ月連続月足陽線)、そして再度下落局面」の動きとなっている。
相場区分からは「実勢悪」を織り込みにゆく『逆・壮年相場』、寧ろ買いの目線で相場を注視する局面に接近してきている。

■「青春期相場」で高値形成の銘柄群の買い方
前号で、「青春期」「壮年期」「老年期」でそれぞれ高値形成している銘柄を取り上げた。
今回取り上げる「青春期相場」で高値を形成した銘柄群は、特にオールドエコノミー株、バリュー銘柄が多い。
価格水準的には「里帰り水準」に接近してきているものの、これから実勢悪を織り込む局面を迎え、まだ底練りの日柄調整局面を余儀なくされる。
次の青春期相場を迎え、外国人投資家の実需の買いが入る上昇局面までには、まだ持久力を必要とする。
自身の買いの方針を明確にして対応してゆきたい。

【お知らせ】
「投機の流儀 セレクション」のアーカイブは、電子書籍の紹介サイト「デンショバ」にてご覧になれます。
デンショバ
http://denshoba.com/writer/ya/yamazakikazukuni/touki/

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。

ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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