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【投機の流儀 セレクション】次に本気で買うのはいつか

これで、3月13日に個々の銘柄は大底を突いたから新しい相場が始まるのか?と問われれば、もちろん「それは違う」と言わざるを得ない。あくまでも中間反騰である。中間反騰の定義は前の高値を抜かないということだ。大きい場合には半値戻りもあるし、3分の2戻りもある。「半値戻りは全値戻りだ」などと根拠のない口伝を言い出す者も出てくるような大きさもある。だが、決して前の高値を抜かないというのが中間反騰の特質である。中間反騰と言うからには、本当の意味での大底が来る。少々時間がかかるのではないかと思う。そう気安くは大底圏内を買わせてはくれないものだ。
それは実体経済の悪化が具体的に形となって現れ始める予兆が見えた時に来る。例えば、3月決算が大幅下方修正とか、21年3月期決算が(2ヶ月前まではV字型回復かL字型回復か連続減益かは不明だったものだ)、大幅減益でそれが何%の見当だとかそういう数値がささやかれるようになった時に二番底を突くであろう。それが近づくまで筆者ならば買わない。
景気は株価よりも遅行するから、その頃に景気は「収縮期」に入ったということになろう。決して「谷」にはまだ至らない。「谷」に未だ至らない時に株価は大底を突く。したがって、「景気は右肩下がり、株は右肩上がり」という時代が来る。これを昔から「不景気の株高」と言ってきた。その時が来るまで本気では買わない。時々手を出して見るのは悪いことではない。但し、運用資金の1割か2割にとどめたい。「手を出して、判る相場の弱さかな」という口伝もある。手を出していたからこそ本気で買う時期が判るのだ。これを昔から、所謂「打診買い」と言ってきた。但し、決してキャッシュポジションが高いからといって買い漁ってはいけないと思う。
「売りは早かれ、買いは遅かれ」と言う。「売りは早かれ」というのは、この中間反騰で3,000円高したところを1回は利を取っておくという迅速な行動を指す。「買いは遅かれ」というのは、景気がいよいよ後退期に入ったことは政府も認めたから、これも収縮期に入ったということを認めざるを得なくなって景気動向指数は既に収縮期を示している、こういう時にまだ「谷」が来ないうちに株を買い始めなければならない。
この時こそ本気で買いたい。その時また本稿では「中間反騰で一旦は換金して利益は鍋の中に一旦入れて、そしてキャッシュポジションを高くとったまま待とう」と呼びかけたのは、またまた大時代的に「百年兵を養うは、この一日に用いんがため」と本稿で言わねばならない日が来るであろう。それまでの市場に対峙する心境は、決して「鍋の中に入れた中間反騰で押さえた利益」で満足せず、「刃の下にこころ置きたりの形(忍の字儀)」をとり、「身は刃の上を歩く気になり」という心境を堅持したい。カギカッコ内は「柳生新秘抄」にある一文である。

【目次】
第1部 当面と中長期に処するスタンスについて
(1)「売りは早かれ、買いは遅かれ、」
(2)「ルンルン気分の『ル』で売れ」(筆者の言い分)、「絶好調の『絶』で売れ』(不動産コンサルタント長谷川高氏の言)
(3)実体経済の悪化が具体化してきた。 「有事モードの中に宝物がある可能性あり」
(4)二番底あるいは大底圏内の時期はいつか
(5)「2番底」或いは「大底圏内」を買うために
(6)当面の市況:先週の相場つき
(7)当面の市況:この3週間の激動
(8)「温故知新」
(9)次に本気で買うのはいつか
(10)NY株、景気刺激策に期待し3日続伸、だが所詮は中間反騰
(11)実体経済への悪影響は日増しに拡大
第2部 中長期の見方
(1)NY株の中長期の趨勢
(2)中長期の見方; 膨大な成長力を持つはずの日本の農業
(3)原油下げ止まらず、世界株は週間に12%下落
(4)NY、3月の下落幅は6000ドルを超え、下落率▼24% 、今が好機だという見方
(5)今回のコロナショックは、「金融市場の混乱から発したリーマンショック」とは異なる「実体経済の悪化」である。
(6)実体経済に対する安倍政権の認識の甘さ
(7)3企業が内部に蓄えてきた時価総額の1割以上に達する内部留保は今になって役立つ時が来た
(8)今こそ財政出動の意味を見直す時だ
(9)市場参加者と各国国民が今の半パニック状態から冷静を取り戻すために
(10)ネット証券口座開設急増
(11)野村證券が小口投資家に注力
第3部 読者との交信欄
(1)岩国のHさんより「評価益の出た分を利食いすべきか」について;3月26日(木)
(2)杉並のSさんより「暴落の安いところを買ったものを利食いすべきか」について;3月26日


【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。

ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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『投資で勝ち続ける賢者の習慣』
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『投機学入門 不滅の相場常勝哲学』(電子書籍)
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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