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Cindella whom I made for him

磨けば光るとか、

別にそんなんじゃなくて。


可愛くねぇ奴に話し掛けるほど

俺は優しくない。


「颯太先輩、助けてください。
明日、清田先輩とデートなんです!!」


そんな電話を

一体、何度取ったろうか。


「知るか、バカ。
俺には俺の用ってもんがあんだよ。」

「そんなこと言わないで!!
一緒に作戦立ててください!!」

「…ワックで待ってろ。」

「はいっ!!」


あの日だって、

誰でも良かったから
話し掛けた訳じゃなくて。


気にもならねぇやつと

ニケツする趣味は

さすがにない。


「颯太先輩!!遅いですっ!!」

「はぁ?!ふざけんな。
俺は女との約束捨てて
わざわざ来てやったんだぞ!!」

「嘘だ。
颯太先輩、いま彼女いないもん。

いたら私のことなんて
見捨てるに決まってる!!」


彼女なら、いた。


いやもう、それはそれはかわいい彼女が

…三人くらい??


正直モテなかった記憶はない。

まぁ、モテた記憶もさほどねぇけど。


定期的に彼女がいたし

定期的にフラれたし

定期的に浮気もした。


「で??作戦ってなんだよ??」

「じゃーん!!
見てください、これ!!

ここに明日、
二人で行くんです!!」


そう言って示される場所を

知らなかったことはない。


だって、そりゃそうだろ。

俺がギンに
「菜摘ココ行きたいらしいぞ」
って、教えてやってんだから。


「ほぉー。さすがギン。
おまえの気持ち分かってんなぁ。」

「やっぱり清田先輩って
王子様みたいだなー。」

「あんな腹黒い王子嫌だよ。」

「その方が国家安定しますよ。」


菜摘ってやつは本当に
素直じゃなくて。


俺にはこんなにギンのこと
好きだ好きだと言う癖に

ギンの前になると
途端に喋らなくなって。


それを一回、指摘したら

「それが恋です」

って、顔を赤くさせていた。


残酷な女だと

その時、思った。


だけど、

可愛い奴だとも思った。


俺がタバコに火を点けようとすると
キッと睨んでライターを掴む。


「なにすんだよ。」

「死にますよ。」

「死なねーよ、アホか。」


バッと菜摘の手を払い

カチ、と火を点ける。


趣味悪いかもしれないが

この時、一瞬だけ見せる


こいつのこの、

寂しそうな顔が好きだ。


「…で??なんの作戦??
遂に告白すんのか??」

「そ、それは無理ですっ!!

明日の私の目標は
『手を繋ごう』ですから!!」


毎回毎回、意味不明な目標聞かされる
コッチの身にもなれバカ。


「そんなん歩いてる時に
軽く腕ぶつけりゃあ、
ギンならすぐ手くらい繋ぐだろ。」

「いや、でもっ!!

腕、ぶつからないからっ!!」

「だから、隣並ぶだろ??
で、こう、腕ぶつけんだよ。」

「痣になったらどうするんですか??」

「おまえ、どんだけ強くぶつける気だよ。

軽くだよ、軽く。」


菜摘は少し悩んで

俺のことをまじまじと見る。


「清田先輩、私のこと
キモいって思いませんかね??」


ギンもおまえのこと

大好きだから

大丈夫だよ。


「思ってねぇから安心しろ。」

「ホント??ホントに??」

「あぁ。」


不安そうなその表情も

悩むその姿も


全録画してギンに見せたら

さぞ喜ぶだろう。


「でも普通、気付きませんかっ??

私、こんなに好き好きアピールしてるのに。」

「…なぁー。」


いや、あいつ
とっくの昔に気付いてるよ。

分かってておまえの反応見て
楽しんでる鬼畜だぞ。


まぁ、俺も

そうなんだけど。


「じゃあ、頑張ってみます!!
腕ぶつけてみますっ!!」

「おぉー。
強くやりすぎんなよ。」


立ち上がって、

簡単に俺の隣に並んで

普通に腕もぶつかって、


俺はまた

少し、落ち込む。


「…なつみー。」

「はいっ」


「もし失敗したら

俺が優しくしてやるよ。」


菜摘は少し笑って
ハッキリ、頷く。

「お願いしますっ」

バカだ、こいつ。


バカすぎて

嫌になる。


「因みに優しくって、
ホテルでだからな。」

「…最低。

颯太先輩、だいっきらい。」

「うそうそ。


オメーみたいなガキ
興味ねーよ。」


俺は知ってる。



俺なんかより

あいつといたほうが


絶対、幸せになれる。



Cindella
whom I made for him







**


「もしもし、そうちゃん?!」

「あー…、ギン。」

「明日菜摘ちゃんとデートなんだけど
服決めたいから家来てほしい。」

「…俺にも俺の都合が、」

「待ってるから。」


俺が菜摘に優しくできたことなんて

一度だって、ない。


だって俺の出る幕なんて

ほんの、一瞬だから。







2012.01.19
hakuseiサマ
Cinderella 

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