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夜が明けたって俺は変われない


弱いよりは強い方が良いけど、

強すぎるよりは弱い方が良い。


目の前で倒れた男を見た時に

素直にそう思った。


何も手に入らないよりは

何か掴める方が良いけど


何もかも壊すよりは

何も持てない方がマシだ。


「ひかる、

もう、良いって。」


掠れた声で
誰かが俺を止める。

誰かの手が俺の腕を掴む。


恐る恐る、

掴む。


「離せよ。」

「もう…、やめろよ…。
意識、飛んでるじゃんか。」

「こいつが売ってきたんだろ。」


誰かを傷付けることでしか

自分の価値を見出だせないなら


いっそ、

誰かにやられる方が


きっと、マシだ。



愚かだと笑うくせに、
誰も俺を責めはしない。

言っても分からないから、と

なにかを言われた覚えもないのに。


俺は俺の生き方があって

俺の道があるんだ、と


かっこつけた言い訳も

しあきてしまった。


「ひかる、」


誰かが俺の名前を呼ぶ。

だけど、誰が呼んでるのか
俺には分からない。


分からないけど

俺は振り返る。


「もう、やめとけ。」


止められるのを待って、

怒られるのを待って、


殴られるのを待って、


気付けば誰も俺を

呼ばなくなって

怒らなくなって

殴らなくなった。


多分いま俺はものすごく自由だ。


縛られるものは何もないし

恐れるものも何もない。


好きなことをやっていても

誰にも何も言われない。


みんなが俺に従って


だけど、みんなが

俺を避ける。


自由と孤独は紙一重で、

ほとんど同じで、


だけど微妙に違うから

俺はまだ、
自由が欲しいと言ってみる。


「警察くるぞっ」

「おい、ひかる!!
さっさと行くぞ!!」


もう、どうせなら

捕まえてくれれば良い。


なのにどうして誰も
追いかけてくれない。


「…うん。」


間違ってるのは分かってる。

だけど、ココにいないと
誰も相手にしてくれないから。


自由は欲しいけど

孤独は嫌だ。


「輝が派手にやるから
焦ったじゃねーか。」

「…ごめん、」


空はまだ、真っ暗で。


星を探しても、
俺には見つけられなくて。


わかんないけど、

見つからなくて。


「…いま何時??」

「さぁ、しらね。」


多分夜明けなんて

この世にはないんだって、


独り、そう思うのも

結局のところ


自己防衛にすぎない。



夜が明けたって
俺は変われない







**


「ともちゃんっ!!
授業出なきゃダメー!!」


だから君を見た時は

素直にすごいと思ったんだ。


誰かの手を掴んで

どんなに傷付いても
誰かを救おうとした君は


俺なんかより

ずっと、強い。






2011.12.08
hakuseiサマ
夜明け

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