ありふれた光景
先輩はテーブルの上に
頬杖をつきながら
ボーッとテレビを眺めてる。
「あのー、先輩。
関東ライブのことなんですけど。」
「あー…。
予算、どうだった??」
「大澤いわく、
先月の節約の甲斐あってか
去年より三箇所多く
回れそうらしいです。」
私は嬉しそうに振り返った先輩に
七月後半から八月の
予定表を見せる。
「今のところ、
予定はこんな感じです。
どうですか??」
その予定表を真剣に見てから
うーん、と首を傾げた先輩。
「ここ、三日連続は
少しキツくねーかぁ??」
「でも、ホテル代のことを考えると
これの方が経費削減です。
事務所も、交渉しても
今年も昨年同様
全然お金、出せないらしいですし。」
冷静に答えると
ふぅん、と納得の様子。
「了解。
会場は??押さえたのか??」
「はい。
事務所の方に頼んで
押さえてもらいました。」
私の返事に
若干興味なさそうに
うんうん、と頷く。
「で??あのー、ほら。
巧さん達との対バンは??」
「茂一さんと相談して
八月にしてもらいました。
八月三週目の日曜の夜が
いま、一番可能性が高いですね。
因みにTHIEFの皆からも
対バンお願いされてますよ。
あ、あと、先輩。
福島先生が今年の桐高文化祭、
客演しないかって。
それから前も言いましたけど
木嶋さんが今年の夏フェス、
参加誘ってくれましたよ。
もちろんOKしたので
早めに会議しましょう。
それから千葉ですが-」
「もー、うっせーよ!!
今テレビ見てんだろーが!!」
先輩はそう言って
私にシーッ、と威嚇してくる。
「いま言わないで
いつ言うんですかっ!!」
「後でだよっ!!」
「後っていつですかっ!!
今でしょっ!!」
その言い方が可笑しかったらしく
先輩は吹き出すように笑った。
「?!
な、なに笑ってるんですかっ!!」
「いや、だって。
はっ、今の言い方…、」
堪えるように笑う先輩にイラッとして
パシリと叩いた。
「いて、」
「もう、良いです。
フクちゃんに相談します。」
拗ねる私の肩に腕を回し
露骨に宥めだす先輩。
「悪かった、悪かった。」
「思ってもないことを
よく二回も言えますね。」
「いやー、思ってる、思ってる。」
…ズルい人だ、ほんとに。
「…先輩、」
「なに??」
「許しませんからね。」
だって、こんな顔されて
そんなあしらわれ方。
私は結局、
許さざるをえない。
ありふれた光景
**
あぁ、幸せだな、と
スズをからかいながら思う。
こんな幸せな光景が
日常になってしまって
俺は恐ろしいほど
君が、愛しい。
2011.07.15
【hakusei】サマ
344/365「ありふれた光景」
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