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天秤にかけてみる

和泉の部屋で、二人で
『夏をもういちど』の再放送を見ていたら

夏瀬くんが、優花ちゃんに言った。


「俺の方がお前のこと
ずっと、何倍も好きだって

いなくなって
ようやく気付いた。」


泣きそうだったのに

和泉の方が先に泣きやがるから
なんか、泣けなくなる。


ムカついたので足を蹴ったら
「ティッシュ」と言われた。


「何倍も好きとか、
天秤で量ったのかよってツッコんで良い??」


テレビを消して
30分くらい経った頃に私が聞いても
和泉はグラビアに夢中。


「…天秤で量ったのかよって、」

「勝手にツッコめば良いだろ。
お前、ホントに心歪んでんな。」


言い直そうとしたら
目も合わせずにそう言われる。


言っとくけど私の心がいま歪んでるのは
和泉が先に泣いたからであって

私がちゃんと先に泣けていたら
こんなこと考えないで
素直に夏瀬くんと優花ちゃんの二年後の再会を
讃えることが出来たんだからね。


「ここに、なんでも量れる
大きな上皿天秤があったとします。」


グラビアに夢中な和泉に寄り掛かり
私は勝手に話を始めた。


「左側には、

私の和泉への愛を乗せましょう。」

「右側にお前の体重で
お前のが重い程度だろ。」


「右側には

地球を乗せましょう。」


和泉は目を丸くして
私が喋るのを止める。


「ちょ…、ごめん、言い過ぎた。
お前の心は歪んでねぇから。

真っすぐ過ぎて怖いくらいで、」


「和泉への愛の勝ち。」


続行する私に

ひえー、とか言う。


「こえーんだよ、お前が言うとっ!!
なんか、色々滅ぼしそうで!!」


どうやら私の

地球と和泉、どっちか選ぶなら
私は地球滅ぼしてでも和泉守るよ

的なことを言った手紙が

和泉には相当、恐怖だったらしい。


そこは喜ぶ所じゃないの??

わかんないけど。


「地球は思ったより軽かったので
私の幸せと比べてみます。」

「もう辞めろよー…。」


「和泉への愛の勝ち。」


はぁ、とため息をつき
雑誌を閉じる和泉。


「最後に仕方がないので
私の命と比べてみたら、」


和泉への愛の勝ち、


そう言う前に

唇を塞がれた。


「…じゃあ、俺のために

ちゃんと生きて、

ちゃんと幸せになれば、


オール解決ってことで。」


私が小さく頷くと
和泉もうん、と頷いた。


「…和泉、」

「おう。」

「私、明日アメリカ帰るわ。」

「…はっ?!」


「私の幸せのために

いつも色々、ありがとう。」


和泉はため息をついて
もう一回、頷いた。



天秤にかけてみる







**


地球<和泉への愛

私の幸せ<和泉への愛

私の命<和泉への愛


和泉の幸せ≦和泉への愛
(和泉からの愛=和泉への愛
の、時のみ成り立つ)






2011.11.07
hakuseiサマ
天秤にかけてみる 

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