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撃ってしまえたら楽なのに

大学に入ってから

伍樹の人気が

上昇しまくってる気がする。


「伍樹くん、またね!」

「あ、はーい。」


にこやかに笑う伍樹の隣で
私は殺戮オーラを出しまくる。

そんな私を見ても
伍樹は穏やかに笑う。


「ほのちゃん、
なにおこってるの?」

「死ね」


その一言に
大爆笑する伍樹が

憎らしくて腹立つ。


「まあ、仕方ないでしょ。
俺ら全員大学バラバラで
それでもバンド続けていくには
インカレのサークル入って
組み直すしかないって。」

「やめればいいじゃん!」

「趣味程度には
続けたいんだよ。

5人とも。」


高校を卒業して
もうすぐ二年が経つ。

伍樹達
THIEFは5人とも
それぞれ違う大学にはいった。


私はまあまあいい大学に
推薦で入って

伍樹はものすごく
頭のいい大学に
努力して、一般ではいった。


努力しちゃったせいで

モテモテだ。


いい大学に入って
優しくて、
まあまあかっこよくて


自慢の彼女、から

自慢の彼氏、に

形勢逆転した。


「じゃ、またね!」


遠くなる伍樹に手を振って
大きくため息をついた。


私はそのまま、
その足で、
三年生の男の人たちと
飲み会に向かう。

いきな、って言ったのは


伍樹だった。


「仙崎さん、
ほのちゃん推しだって!」


推し、という言葉を
アイドル以外に使うのを
私は大学生になって知った。

だけど、
ずっと前から
知っている振りをした。


私みたいに
可愛いを保つ努力なんて
みんながしてた。



いまは
「推し」って言われる数を
競う世界に生きてる。


「やったー!

私も仙崎さん、
結構すきです!」

「まぁ、言っても
ほのちゃんの彼氏は
中野だもんなー」

「いいなぁ、ほのちゃん。
賢英で、優しくて、
ドラムも上手いし?
ノリもいいし、
かっこいい彼氏がいてさー」

「俺らの前で
後輩誉めんなよー」


かっこいいは、

可愛いと違って、

嘘だと思った。


男のかっこいいは
肌を綺麗にするとか
髪を綺麗にするとか
唇をぷるぷるさせるとか

そんなことじゃなくて。


ちゃんと生きてれば
かっこいいになれる。


そんなことを
伍樹に思っちゃう自分は
やっぱりサイテーだし


「ほのちゃん、
俺に乗り換えなよ」

「んー。


悩んじゃう!」


伍樹のこと

こんな風に使うのも

サイテー。


こいつらもサイテーで
わたしもサイテーで



全部、
左から右まで
機関銃で
撃ってしまいたい。



撃ってしまえたら楽なのに







**

全部なくなればいいんだ。

全部、全部、
撃って、しまって、


これを話しても
きっと伍樹は笑うんだろうな。






2016.02.01 

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