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そういえば、好きだった

なんでなんで、なんで。


どうして私じゃないの。


「あー!睦美も追試だー!」

「フミと一緒とか、最低。」

「最低とか言うなよ!」


フミとは小中高、全部一緒。

住んでるとこもすぐ近く。

でも、桐高に行く人、
私の中学からは6人もいるから
別に珍しくもない。

なんなら、小中高一緒なの、
フミと、あと二人いるし。

去年卒業した和泉先輩も、
疾風先輩も、新庄先輩も、

小中高一緒。


疾風先輩にも、新庄先輩にも
むっちゃん、って呼ばれて
皆からはいいなー、って。

和泉先輩のおかげで
秀先輩とか、大澤先輩とか、
角山先輩とか、皆川先輩にも
手とか振ってもらえてたし

私は高校生活を
とても華やかに過ごしていた。


「つーか、睦美が追試って
あり得なくね?

お前、どうした?体調不良?」

「なんでもないよ。
点数、悪かっただけ。」


二年生になって
フミと同じクラスになって
私の胸は高鳴った。

でも、この間知った。


フミは生徒会の
山本さんとデキてるらしい。


それを知ったのが
この、テストの日で

私は最悪のコンディションで
テスト本番を迎えた。

いつもそこそこの私だから
鳥取先生はすごく
私を心配してくれたけど、

理由なんて言えないし。


フミのことが好きだった。
…らしい。


らしい、って言うのは別に
言い訳とかじゃなくて。

いや、むしろ、こう。


フミは私のことが

好きなんだと思ってた。


そんな私を見つけて

すごく、恥ずかしくて

苦しくなった。


中学三年の始め、友達に
『フミくん、
睦美のこと好きらしいよ』
と小声で言われて、

フミは確かにモテるのに
彼女、なぜか作らないし、

当時、私のことだけは
下の名前で呼んでいたし。


決定的だったのは


フミはバカなくせに

桐高を目指したから。


私が行くって言ったら
俺もって、言ったから。


お前が行くから俺も行くって

言われたのかと思ってた。


「…睦美ー、問二、
答え何にしたー?」

「さん。」

「…うわっ、ぜってぇ嘘!
なんか、ニヤニヤしてる!」

「ほんと。」


フミが山本さんと付き合ってるって聞いて
ショックだったじぶんにショックだった。


なに、わたし。

なんで、落ち込む?


フミは私のじゃない。

知ってたよ、うん。


なのになんで私は

私じゃないの?って

思ってしまってるんだろう。


「そういえばさー、」


フミの声は少し高めで
でも、ちゃんと聞き取りやすくて

声変わり
いつの間にしたんだろ。


「俺、中学の頃、

お前のこと好きだった時、
あったの、知ってる?」


マジ?うける。


私が言うべきは

その言葉。


「…マジ?」

「うん、ちょっと好きだった。」


うける。

うける、なにそれ。


言え、自分。


「…うける。」

「は?!なんでだよ!!」


「なんで告白、

してくれなかったの。」


私の手は震えた。

唇はもっと震えた。

目頭が少し熱くて
言ってから後悔した。


「…え?」


「告白してくれれば

大々的に振ったのに。」


黒髪だった頃のフミと
同じ表情でポカンとした。

同じ表情で怒った。


同じように

私を叩く。


むしろ、全部、
髪色と一緒に

何かに染まってほしかった。



そういえば、好きだった









**


ひどいって思った。

どっちが?


私がひどい気もした。


でも、こんな簡単に
もう、笑い話に出来ちゃうくらい

私への想いを過去にするフミも
ひどいって思うけど、

フミらしくて、


やっぱり、フミは
黒髪のが、似合う。






2012.05.11
hakuseiさま
そういえば

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