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告白できない言い訳

野上は机で漫画を読む俺のことを
呆れたように眺めてくる。


「で、お前はいつになったら
山本と付き合うんだよ。」

「…俺思ったんだけどさ、」

「おう。」


「山本って柏葉のこと
好きなんじゃねーかな。」


俺たちの間に妙な沈黙が流れる。
野上の視線は教室の扉の
山本と柏葉に移る。


「いや、柏葉彼女いるし。
あいつらただの友達だぞ?」

「わかんねーじゃんか、そんなの。
だってあんだけ仲いいんだぞ。
毎日毎日一緒にいるんだぞ。」

「生徒会ってそんなもんだろ。」

「柏葉は彼女いるけど、
山本は実は柏葉のことが好きとか、」


俺の無駄口に呆れてしまった野上は
山本との会話を終えた柏葉のもとに
俺を引き連れて行く。


「よぉ、柏葉!」

「あぁ、野上。
この間はギャラスタのチケットありがとう。」


そして俺のことを見て
爽やかに笑う。


「伊達も、ありがとな。」


柏葉と俺は別にさほど
仲良しという訳でもないが
野上が仲いいからその流れで
何度か会話とかしている。

流星も柏葉には
なかなか好意的に接するし
嫌なやつではない、というか

究極にいいやつ。


「そんなことよりな、柏葉。

お前、山本のことどう思う。」


柏葉は野上の話の飛躍に
だいぶ違和感を感じていたが
俺のことをチラッと見たあと
少し考えてから言った。


「山本って、桜のことだよね?」

「お前、生徒会で仲いいだろ。
好きになったことあるか?」

「いや俺そもそも桜じゃない方の
生徒会役員と付き合ってるし。

美山。知ってるだろ?」

「じゃあ山本から好意を持たれてるって
感じたこととかあるか?」


柏葉の視線が完全に俺に注がれて
俺はただただ床を見つめるしかなくて

なんていうかもう、
ほんと死にたい恥ずかしい。


「いや、ないけど…。
…え?っていうか、…え?
伊達ってもしかして?」

「ちがうちがう!!
伊達が山本のこと好きとか
そういう訳じゃねーから!」


もう柏葉のこと見れないし
柏葉もなんなら笑えよ。
なんでそんな平静装ってんだよ。


「だってよ!良かったな!」


席に着きながら
野上はニコニコしてるけど。


「お前にはデリカシーとか
思いやりって言葉がないのか。」

「はぁ?
俺はお前を思ってだな、」



「山本が柏葉のこと好きじゃねーのなんて
とっくに知ってるに決まってんだろ。

俺がどんだけ山本のこと
見てると思ってるんだよ。」


ポカンとする野上に
俺は不機嫌をあらわにしながら
はぁ、と大きくため息をついた。


「お前が言ったんだろ!」

「もういいよ。
お前ほんとなんなんだよ。」

「いや、お前がなんなんだよ!」


「…だから、」


野上の目をチラッと見たあと
すぐに逸らす。


「言い訳さがしてんだよ。」


俺の言葉はあいかわらず
野上には全く伝わらなかった。



告白できない言い訳







**


仕事をしながら私を見て
ニヤニヤする竜。


「なに?
キモイんですけど。」

「桜ってたしか
伊達のこと好きだったよね?」


こいつはほんと、

自分の彼女にしかデリカシーを使わないな!


「だったらなに?」

「こくれば?
上手くいくよ、俺が保証する。」

「竜に保証されなくても
とっくに自覚してるので。」

「あぁ、そう。」

「えぇ、そうです。」


「告白されたいとかいう感情、
お前にも一応あるんだな。」


楽しそうな竜を見て
イライラと恥ずかしさで顔が赤くなった。






2013.06.21
言い訳

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