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だって好きなんだもん

先輩にはずっと言えてなくて、
これから先も言う予定がなくて、


実はとてつもなく

好きなことがある。


夜明けの近づく時間になると
先輩が夜のバイトから帰宅して
静かに静かに寝室に入ってきて

たまに、目が覚めるんだけど、
(もちろん起きれないことがほとんど)


そんな時も顔をあげて

おかえりなんて言わない。


私はひたすら寝たふりを続けて
まぶたがピクリと動かないように
スヤスヤの寝息のリズムが狂わないように

先輩の足音を必死に聞き取って

ベットに近づくのを待つ。


「すずー、ただいまー」


聞こえてるんだけど、
聞こえてないふり。

ごめんね、先輩。


少しため息をついてから
鼻で笑う先輩。


その顔、見たいな。


その衝動に負けて
たまに起きてしまうけど、

今日は我慢。


我慢すると、

先輩が私の唇に軽く触れる。


それから優しく髪を撫でて
「すず、」って呟く。


それで、またキスしてくれて、


そんなことで
愛されてるんだなって
勝手に実感。


ごめんね先輩。

でもね、だって。

だってね?


私が起きてないところで
私が聞いてないと思ってさ、

こんなに愛されてるなんて
知っちゃったらさ?


そんなの、

寝たふりするでしょ?


「…先輩、」

「おはよ、ただいま。」

「…おかえりなさい。」


起きて、先輩の顔をみると

また、眠気が襲うの。


さっきまであんなに
ドキドキしてたのに。


だから、許してね、先輩。



だって好きなんだもん







**


「スズって本当、起きないよな!」


そう言いながら不機嫌そうに
遅い朝ごはんを食べる先輩に

「ごめんなさい。」


全然違う反省をするのが

私の楽しみ。






2013.03.17

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