カチューシャ カルピス コーラ
2023/2/9
カチューシャカルピスコーラの3つのお題で作文を書いてみてください
診断メーカー、三題噺お題作成様より
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カフェの窓際の席。向かい合って座る僕と彼女。その間にちょこんと置かれたカルピスとコーラ。こちらの様子を見て不思議そうにしている店員さんを、彼女はイライラとした様子で鋭く見つめた。言いたい事は大体分かる。
彼女が言葉を発するより前に、僕は店員さんに軽く頭を下げて感謝を伝える。店員さんは不思議そうにしたまま厨房へ戻っていった。
すると今度は僕に彼女の視線が突き刺さる。
「なんで言わないの?カルピスを二つ頼んだはずだけどって」
「折角持ってきてもらったのに言いづらいじゃないか。別にいいだろう、カルピスとコーラだって」
「お金を払うのは私達なんだから当然の権利でしょう」
「そうだけれど、今忙しそうだから悪いじゃないか」
「しかも私の前にコーラだわ」
「僕のカルピスと交換するから」
「いいわ、いらない」
そう言って彼女はストローを袋から取り出してコーラのグラスに刺した。少しの仕草からどれだけ彼女が腹を立てているかが窺い知れる。
まずい。こうなると彼女はなかなか機嫌が直らないのだ。
僕は息が詰まるような気分になりながら何か空気が変わる話題はないか探した。
彼女の身につけているカチューシャに目が留まる。
「カチューシャ」
絞り出すようにカチューシャと言うと彼女は怒りで伏せられたその視線を僅かに上げた。
「カチューシャが、何?」
「カチューシャ、似合ってるね。どこで買ったの?」
沈黙。
何か不味い事を言ったらしい。
血の気が引きかけた所に彼女がぽつりと呟く。
「私、コーラって嫌いなの。なぜだと思う?」
僕が固まっていると、彼女は僕の目をしっかり見据えた。
「甘いけれど炭酸が入っている所が嫌いなの。甘いだけでいいのに、喉越しがいいでしょ?って勝手な思い込みでぱちぱち弾けるじゃない。いつも痛くて嫌だなと思うの」
彼女が席を立つ。テーブルにお金を叩きつけるように置いた。
「貴方ってコーラみたいね」
そう言って彼女は店を出ていった。
僕はその後ろ姿を見つめながら、そういえばあのカチューシャは彼女に頼まれて僕が買ったものだったなとぼんやりと思い出していた。
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