例えば”恐怖”を”興味”に変える
幼児にMRI検査を受診させる際の話。
医者は麻酔をかけて眠らせてしまえと言う。
MRI機器の開発者は「検査時間を短縮するために高速に検査が出来るように性能向上をする」と言うが機器の価格は4倍になるという。
違和感を持って欲しいと思い、現役の医療従事者にヒアリングしてみた。
凄く怪訝そうな顔をして私を睨みつけるので少し驚いて、何事かと尋ねてみた。
すると、相手はきっぱりと言った。
「ドクターの決定は絶対でそれを覆せるのはドクターだけです。ドクターの判断であればそれを疑うのは私たちの仕事ではありません。」
私は何だか背筋に冷たいモノを感じながらも以下の事例を説明をした。
AEH: Ambient Environment Healthcareという考え方で、この問題を解決した事例がある。
今からMRI検査を受ける予定の幼児と検査室の前室で小児科の看護師が一緒にままごと遊びをする。
ままごとと言っても、普通のままごとではない。
MRI機器の形をした木製の遊び道具で、兎のお人形を使って看護師はこう言うのである。
看護師:「あのね、兎ちゃんは、お腹が痛いから今から検査を受けるのよ。あなたはお医者さんの役をしてね」
幼児 :「はーい、どうすれば良いの?」
看護師:「兎ちゃんを検査機のベッドに寝かせてあげて」
幼児 :「はーい、寝かせたらどうするの?」
看護師:「その次は、ベッドを少しずつ検査機の中に入れてあげて」
一連のままごとは、今からこの幼児に起きるコトを再現していて、怖さを低減させる役目を果たす。
看護師は優しく工程を再現する。
「検査機の中にお腹まで入ったら『はーい、息を止めてね』と言ってあげてね」
「痛くないから怖がらないでね、と兎ちゃんに言ってあげてね」
更にままごとが終了したら、壁に埋め込まれたスイッチの前に案内して「検査中は、どのアニメを見たいかな?」と幼児に好きなアニメを選択させる。
それから検査機の前に子供を誘導すると子供は自ら検査機の寝台に乗っかろうとする。
さっきまで看護師と一緒に遊んでいたから自分は何をすれば良いのかを理解しているのである。
そして検査室の壁には選んだアニメのキャラクターが映し出されて「一緒に遊ぼう」と手招きするのである。
一連の施策によって幼児はいくらか落ち着いて検査を受診することができる。
これだけの準備で、3歳以下の幼児への麻酔投与が3~4割低減し、検査時間が平均して半減したという。
また、検査時間が減ることにより画像処理時間が20%低減させることにも成功している。
生産性が向上したことは言うまでもない。
幼児のMRI検査の意味が変わったことがお分かりいただけるだろうか?
「課題解決」に注力するというアプローチでは、病院経営の痛点である生産性に注力してしまうが、「幼児の気持ちに寄り添う」という検査そのものの意味を変えることにより「優しい気持ち」を患者に贈り物として提供するのである。
本来のイノベーションとは、当事者に「優しい気持ち」というギフトを贈るものではないか。
これが熱狂的に人々を夢中にさせるラジカルなイノベーションに発展するのである。
そんな思想の、意味のイノベーションを弊社のイノベーション創造(アイディア創出)講座では採用している。
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合同会社タッチコア 小西一有
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