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つくりながら考えていること

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エッセイ集。つくるためにつづけていることや、考えていることを書いています。現在 原稿用紙129枚分。
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2023年1月の記事一覧

土のにおいとスマートフォン

土のにおいとスマートフォン

 11月にiPhoneが故障してから、三ヶ月間ほどスマホのない生活をしている。一ヶ月経った頃に電話がないとガスや電気などの生活インフラさえ保てないという事実に直面し、電話機能だけの携帯を購入した。緊急の連絡が必要であれば電話をしてもらっている。メッセージやLINEはパソコンから返すことができるし、最近は緊急の連絡が必要になる性質の仕事は極力受けないようにしているので、連絡に関しても殆ど困ることはな

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何をつくっているのか知りたくて何かをつくっている

何をつくっているのか知りたくて何かをつくっている

 最近、絵を描くことが自分とつながり始めているような感触があった。ある日にある一枚の絵を描き終えて数時間経ったあと、急にそのことをじわっと感じた。絵を描いているときに初めて感じる感触だった。

 絵を描くとはどういうことなのだろう。自分にとって、物語を書くことと、絵を描くことは、何となく僕の身体の構造内において綿密につながっているような気がしている。

 これまでも絵やグラフィックの制作は、何かの

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風待ちの港

風待ちの港

 伊豆稲取という場所に行ってきた。人口5,000人ほどの港街で、漁業では金目鯛と、温泉の観光業で知られている。どこか素朴なところもあり、熱海や真鶴などの地域あたり独特の、太平洋の大きな波が徐々に穏やかになっていく入り江を、ぐるりと半島が囲むようにして出来ていった港街の雰囲気が、不思議と忙しない時間を忘れさせてくれて、それがとても心地よい感覚を作り出していた。

 伊豆稲取は、1年半ほど前に友人が移

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生きることと、それ以外の時間

生きることと、それ以外の時間

 東京から、住む場所を移ろう、と最近考えている。自分にとって、どんな場所がいいんだろう。分からないから、いろいろな場所を訪れている。木工の仕事をしながら岡山の県北の西粟倉村で1ヶ月ほど滞在したり、友人の移住した秋田の根子を訪れたり、和歌山の新宮から山間に入った小さな村に滞在したり。

 ぼくは今、東京都内に住んでいる。東京に来たのは二十二歳の頃だったので、7年目ということになる。そんな中で、継続で

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一人一人が自分だけの物語を携えて生きている

一人一人が自分だけの物語を携えて生きている

 小説を原稿用紙で書き始めた。これまではパソコンやiPadを使って書いていたのだけど、どうしても、新しい情報が入ってきてしまって、何となく集中できていないような気がした。自分とつながって、深く潜っていくことが邪魔されてしまっているような気がしていた。

 原稿用紙に書くことを始めてみて、自分の中に深く入り込んでいく感覚がとても大きくなったと思う。これは個人的に、すごい発見だった。

 年末から書き

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