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村の劇団

 かあさんが二十歳のころ。村には映画館もなくて。
 戦争中は戦意高揚映画が来たけど、終戦後はそれもなくなり。
 お盆でみんなが集まると、青年団が劇をしたりしてみんなに見せて楽しんだ。秋は収穫で忙しいけど、夏はそうでもないのだし、若い者とはそうしたもので。
 とうさんは歌がうまかったそうだ。
 かあさんは音痴だったもんな、とよく言って怒らせてた。

 ラジオから流れる流行歌をコピーし、旅劇団の持ち歌を覚えて、劇も完コピしたそうだ。赤城の山も今宵限り。
 かあさんは友達3人と組んで、歌と踊りで拍手を取ったらしい。
 近所のCちゃんは歌も踊りも達者で、盆踊りを創作するくらいの才能。
 かあさんはうんと応援して、友達と3人で盛り上げた。

 10年もしたら、隣町に映画館ができ、車社会になって、みんな外へ行ってしまった。写真の中のかあさんはいつも笑っている。

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夏の思い出

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