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テレビの中の暴力

バラエティーの定番ハリセン、テレビから消える? 放送作家のツイートにSNS騒然 「つまんない世の中」「やりすぎ」(まいどなニュース) - Yahoo!ニュース

放送作家の辻井宏仁氏が、バラエティー番組の小道具「ハリセン」がコンプライアンス的にNGになったとTwitterに投稿したとのこと。
辻井氏のnoteからは「ハリセンもダメなのか、と意外だったのでTwitterで呟いたところ…」と淡々とした雰囲気が伝わってきたので、辻井氏は以前から「いつかはハリセンもNGになるのではないか」と心のどこかで予感していたからこそ「あぁ今のご時世としては仕方ないか」と受け入れたことによる、冷静な反応だったのではないだろうか(違ったらすみません)。

また、氏には「(小数派の意見として)ハリセンのような暴力的なものは無くなって当然、という論調の声」も寄せられたそうだ。

僕の高校生の時の仲の良かった友人が芸人のダウンタウンが嫌いだった。曰く「ツッコミが強くて嫌い」。友人は電車の優先席付近ではケータイをマナーモードにするのではなく、電源をオフにするくらいの真面目くんだったので、彼らしいなぁと思いつつも「あれはあくまでもテレビの中の出来事なのだけどなぁ」と同意できなかった。

ダウンタウンと言えば、その昔、『WORLD DOWNTOWN』(ワールドダウンタウン)という番組があった。放送期間としては数ヶ月だったけれど、伝説的なバラエティー番組だと言っても過言ではない。偶然初めて見た時の衝撃たるや、腹がちぎれるほど笑ったものだ。
Wikipediaから番組説明を引用させてもらうと
欧米のニュース番組を模したセットで、世界の様々なニュース(とは言いつつも、実際はフィリピン・タイ・ケニアの3ヶ国のみ)を各界の著名人のコメントを交えて紹介する番組。MC・コメンテーターの外国人3人の発言は全て同時通訳風に、声優によってリアルタイムで日本語に吹き替えられている。

司会はジル・ベッソン、コメンテーターにジョージアン・アフシンとバザロバ・ナタリアの2名。そして浜田雅功・松本人志の両氏もコメンテーターとして登場しているのである。

バザロバ・ナタリアが下ネタを連発するエロい女の設定で、それに対し、浜田氏は案の定、つっこみを入れる。「エロ女やなぁ~」と言うだけの時もあれば、「パンツの中を見せろ」のような性的なことを言うときもあれば、頭を叩くこともあった。

全22回の放送で、ジョージとナタリアが出演しないことがあった。お盆ホリデー(夏休み)が理由で、代わりの外国人コメンテーターが出演していた。毎回同じ出演者ではおもしろくないから演出として異なるコメンテーターを出演させた部分もあろうが、僕は、ナタリアが出演しなかったのは
「ナタリア(役の女性)は浜ちゃんからのツッコミが本当に嫌だった」
のではないかと睨んでいる。
テレビの収録とは言え、女性が男性に卑猥な言葉をかけられる、頭を叩かれるというのが理解の外だったのだと思う。ナタリア役の女性がどこの国の出身かは知らないけれど、「暴力や暴言のツッコミを受容する芸」は日本特有と言っていいだろう。

ただし、ここは日本で我々は日本人。ハリセンや激しいツッコミが登場するテレビ番組は日本人に向けて作られたわけで、諸外国に気を遣う必要は無いのだ。それが、昨今は日本人が日本人に気を遣うようになった。

おそらく、「ハリセンだろうと人の頭を叩くなんて」「いくらお笑い芸人だろうと頭を叩かれるなんて」という意見は昔からあったのだ。それがインターネットやSNSの発達で、こういう意見が上がると「そうそう!私もそう思ってた!」とリツイート等の反応があり、少しずつ広まる。すると、それを見たテレビ番組スタッフ等が「芸人の激しいツッコミを良く思っていない人が増えている」などと取り上げるものだから、さらに広まる。そうしてコンプライアンスがより厳しくなっていくのだから、ネットで話題になっていることなんぞテレビ業界の人間は取り上げない方がいいと思うのだが、なぜか取り上げたがる。自分で自分の首を絞めているようなものなのに。

さらに私の知人の例をあげると、ある知人は本当に心優しい人で「地上に舞い降りた天使か!?」と、つっこみたくなるほどなのだが(笑)、知人は「ドッキリ」「ドッキリカメラ」の類が好きではない。
『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』は久しぶりの楽しい番組だなぁ等と思っていた僕が、「なぜ?」と尋ねると、天使な知人は「だって、それって人を騙しているから…」と言うのだった。
「なるほど、そういう考えの人もいるのか」と目から鱗だった。

100人中100人に好かれることも無いし、100人中100人に嫌われることもないのだから、いかなるテレビ番組を制作したところで、クレームの1つや2つはきっと来るだろう。NHKはともかく、民放については視聴者がテレビ局に視聴料金を支払っているのではないのだから、各テレビ局は好きな番組をやればいいのだ。視聴者はバカではない。おもしろい番組は見るし、つまらないなら見ない。それが全てだ。

むしろ僕は、テレビ番組に文句を言う人々に疑問を感じる。「あなた方が文句を言っているのは、テレビの中の出来事、フィクションなんですよ。本気にしちゃダメですよ」と言いたい。
子供への悪影響を心配する声があるが、テレビの中の出来事と現実世界の見極めや善悪がつかないのはお宅の教育に問題があるのだ。テレビ局に問題があるのではない、とも言いたい。

このままのペースでメディアの表現に規制をかけていくのなら、そのうち、ドラゴンボールやワンピースだって暴力的なシーンがあるのだし放送禁止になる。ハリセンがNGになることを誰も予期できなかったように。

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