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顔が見えたら

『邦さん』と私は親しみを持って呼んでいる
その人は、
近所のスーパーのお肉コーナーに並ぶ豚肉の生産者だ。

値札に産地と邦さんの名前が印刷されている。

ロース、バラ、豚トロなどあまり見かけない部位まで、
豚肉コーナーの国産豚肉は、全部邦さんが育てた豚だ。

そして私は、
「邦さんの豚肉は間違いない」
と信頼している。

邦さんは、どんな人だろう?
勝手に少し背が低く、ぽっちゃりした
動物に優しそうなタレ目のおじさんを想像している。

以前は『ゆかちゃん』と呼ぶ生産者の
豚肉が多く、「ゆかちゃんの豚肉」も美味しく
同じくらい信頼していた。

「邦さんの豚肉」が登場し、
『ゆかちゃん・邦さん』の時代があったが
いつしか邦さん一色になった。

「ゆかちゃんどうしたんだろう、、。」
と、これも勝手に心配したりした。

育てた人が個人名で記載されているだけで、
買う側は少し安心する。
邦さんにとっては、プレッシャーになっているかもしれないが。

購買者にも、スーパーのバイヤーにも。

邦さんの豚肉の下の棚には、
少し安価な「カナダ産」の輸入豚肉も陳列されている。

極力、同じルールで生活している
ヒトが作る自国産のものを購入する様にしている。

それは外国産がダメというものではない。
当然、海外の生産者も、自分達でも食べるなら、大事に育てていると思う。
が、基準はその国それぞれだと思うので。

安価な理由は、
豚が食べる飼料の量にそんなに差があるとは思えないので、餌自体が安いのか?
敷地が広くて少人数で管理できるのかな?
変動費も固定費も安いからなのかなとか想像するが、良く解らない。

同じ感覚で生活しているなら、
当たり前の事を気にすることがないと思う。

なので、同じ生活圏で作られたものを選ぶようにしている。

◯◯県産だけでも良いのだが、
安心するのは
全く面識のない邦さんを
勝手に知っている人と錯覚してるだけかもとか、

そんな事を豚肉コーナーの前でぼんやり考えていた。

あ。この場合はどうなのか?

『豚肉 ロースステーキ用 カナダ産 スティーブ・J』
と印刷された値札が付いていたら。

手に取って、一度食べてみるかもしれない。
そして美味しかったら「スティーブの豚肉」と親しみを持って呼ぶかもしれない。

のかな?

スティーブは牧場主で、大草原でワイルドライフを満喫する屈強なおじさんとか想像するのか?

いや、外国でどうやって豚が育てられているか知らないから、あまり想像できないな、、。

同じ生活圏である自国産だと想像できて楽しい気もする。

生産者の名前が書いているだけで、
なんだか想像が膨らむものです。

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