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20210624ワークショップ④豊平

開催日時:2021年6月24日 13:30~15:30
場所:グレイスヴィルまいづる-東京(Zoomオンライン)
内容:
①ことばのワーク
 ①-1 砂連尾と豊平がいろんなもの(ぬいぐるみとか仮面など)をみせて、参加者にことばにしてもらう。
 ①-2 砂連尾の動きをことばにしてもらう。
②出たことばをつなげて詩にする。
③参加者全員で感想


***
豊平豪(文化人類学・torindo)


ぼくはほんと無教養な人間で、
詩について語るべきことばをひとつももたない。
(もっとも詩以外でもそうかもしれないけど…)
詩人もほとんど、まったく知らない。

詩を前にして何かことばを紡ごうとすると、
絶望的な気分になる。

でも何はともあれ、
理由はさっぱりだけど、
とても好きになってしまう詩はある。

今回のワークショップで生まれた詩もとても好きだ。

美学者の伊藤亜紗さんの文章を読んでいたら、
「足し算の時間」と「引き算の時間」ということばがあった。

 「引き算の時間」とは、「三日後にプレゼンがあるから今日は調べ物をしておく」のような、未来のある地点から逆算して現在の意味やなすべきことを決めるような時間のあり方だ。決められた期限に合わせるような時間のあり方だから、社会生活を営む上では合理的だ。

 これに対して、「足し算の時間」はもっと生理的である。引き算の時間は、未来が予測できるという前提に立っているが、(中略)体調の変化が激しい人にとって、三日後であっても予測を立てることはかなり難しい。だから、今できることを少しずつ積み重ねて、足していくしかない。できる日もあればできない日もある。足し算の時間は、不均一だ。

 奥野克己・吉村萬壱・伊藤亜紗『ひび割れた日常』(亜紀書房、2020年)、p16.

***

今回のワークショップで生まれた詩は、
「足し算の時間」で成立している。

何の目的も合理性もなく、
目の前の事柄を真剣に見つめ積み重ねたことば。

だから生々しく感じるのかもしれない。
そう、なんとも、どうにも生々しくて、
グレイスの詩だと思うのだ。

***

ワークショップが終わった後、
なじみの若めの女性入居者が砂連尾さんに
「先生っ、先生のことみんな大好きですから、わすれないで」と語りかけている。

この人は毎回砂連尾さんのことは憶えていない。
「砂連尾」という名前も憶えていられない。

今を少しずつ積み重ねていく愛おしい「足し算の時間」はここにもあった。


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