見出し画像

『テスカトリポカ(佐藤究/角川文庫)』、読了。

 >選考委員・宮部みゆき氏「直木賞の長い歴史の中に
燦然と輝く黒い太陽」

https://amzn.to/3xEmPmM

 第165回、直木賞受賞作を、文庫で、再読。解説や、あとがきなどの、追加はありませんでした。
 それでも、傑作であることに、変わりはありません。

 あらすじ:メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人(ナルコ)のバルミロ・カサソラは、潜入先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会う。
 川崎で生まれ育った少年・土方(ひじかた)コシモは、バルミロに見いだされ、彼らの犯罪に巻き込まれていく。
 海を越えて交錯する運命の背後に、滅亡した王国(アステカ)の恐るべき神の影がちらつく――。

 淡々とした語り口なのに、熱を感じる文体は、神話の語り部を思わせます。
 暴力シーンも多いのですが、700P近くもあるのに、実は、性犯罪の具体的な描写は無い、というストイックさ。
 犯罪と、差別と、貧困とを、現実の光景として、描きながら、
無暗に感情的にはならず、それこそ、計画的に行われる
麻薬資本主義(ドラッグ・キャピタリズム)のように、
効率的に、”無駄弾を撃たない”、
そんなコントロールされた厳粛さで支配された物語でありました。

 単行本の読了時と同じことを言っておきます。
 読みましょう、傑作です。

 終わり。

サポートしていただけると、ありがたいです!