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『蟻(アリ)(ベルナール・ウェルベル/小中陽太郎◎森山隆【訳】/角川文庫)』、読了。

 今回、わたくし、破死竜が、読み終えたのは、
フランスの、”アリ小説”です。
 世の中には、良いとか悪いとか、面白いとか面白くないとか以前に、
”絶対、この人じゃなきゃ作れないよ”、という、
個性のメーターが振り切れている作品が存在しますが、
本書もまた、そのような存在でありました。

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 まず、表紙に、無数のアリ。
 次に、<主な登場人物>を見ると、半分がアリ。
 ページを捲ると、献辞がアリに対して捧げられ。
 アリにまつわる、用語解説が4P続き、
その後に、物語内書籍、『相対的かつ絶対知の百科事典(エンサイクロペディア)』なる書が、人間とアリとを比較しておりました。

 第1部が始まる前に、すでにこう↑でしたので、
どなたにも、本書の作者のアリへの妄執は伝わることと思います。

 (※引用)
 >今日では、ベル・オ・カンの地下二十階の広い部屋でキノコの苗が選別されている。すでに、アリたちは、白アリと同じ種類のキノコは利用していない。ベル・オ・カンでは、主にアガリスクという種を栽培している。この農業活動を基盤に、彼らは技術開発を行ってきた。
 (※引用、ここまで)

 描写されるアリたちの様子は、
社会であり、国家であり、歴史ですらありました。
 人間とアリとの描写が、代わる代わる続く形で、本書は記されているのですが、後者に注ぎ込まれた熱量が、前者とは比べ物にならず、大瀑布の水量のようでありました。

 生半可な良書悪書より、際立った奇書を読みたい。
そういう気分のときに、是非、お読みください。

 終わり。

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