九段理江『東京都同情塔』感想

ようやく九段理江『東京都同情塔』を読んだ。

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 堅牢な建築物を建てるように、定義された正しい言葉により主人公の牧名の思考が組み立てられていく。まるで現実を再定義するかのように。
 牧名はかつて、言葉に自分の現実を否定され上書きされて傷を負った人間である。だから言葉にこだわるし、建築家となり、現実を支配しようとする。

だが、正しい言葉による誰も傷つかない話だけで世界を構築することはできるのだろうか。

 現実や人の心はもっと雑多なものであり、拓人が望んだように、親しい人の、揺らぐ心の本音を聞きたいのではないか。

 小説は言葉によって組み立てられている、そしてそれは建築に似ている。当たり前の事なのだけど、改めて認識した。AIを使っている箇所も、小説を作るうえでAIの文章を引用する必要があったから、わかるように使っている。

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