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不登校先生 (65)

「ととろんくん、おかえりー。私はなんも変わってないでしょ。」

帰郷の三日目。日曜日と勤労感謝の日の間の平日。

たけっさんは、有休をとってくれて、僕のやりたかったことの予定に

一日付き合ってくれた。本当にありがたい。

恩師に会うのと同じくらいに大事な、今回の帰郷のイベント

【母校の小学校に行く】

たけっさんの住んでいる鹿児島市から、薩摩川内市へ。

僕が子どもの頃は、川内市だったが、合併して薩摩川内市になった街だ。

母校は川内駅から見える寺山の真裏にある。寺山のふもとから川内駅までは

市街地と呼んでいいほどに人も多く栄えているのだが、

寺山の裏にある母校の校区は、車で2・30分ほどの距離なのに、

生い茂った草は刈られずに道まで跳び出ていて、

目に見える景色は田んぼだけだった頃の方が良かったくらいに、

耕作放棄地がまばらに見えて、田舎というより、

限界集落に近い印象を受けるほどに人がいなくなっていた。

それでも、学校とその付近のまばらにある店には、

幾分かの活気が感じられる。

冒頭の言葉で出迎えてくれた小学校時代の同級生のしずさんは、

本人が「変わらないでしょ」といったとおりに、

子どものころの面影の残るお母さんになっていた。

今日やってきた母校に、お子さんを二人通わせているとのことで、

またPTAの役員さんとしても、よく学校に打ち合わせにきているとか。

地域の頼れるお母さんになっているようだった。

「もうすぐ、いつさんもくるから」

いつさんも同じく小学校時代の同級生。

いつさんは同じ集落(今でいう地区のような感じ)でもあり、

子ども会の行事などでも一緒に活動することが多かった。

「ととろんくん久しぶりー。」

いつさんも合流して、4人で管理職の先生にあいさつに行く。

あいにく校長先生は出張。教頭先生がバタバタと

忙しそうに駆けているところで、お会いできたのでご挨拶をすると、

「あ、話は聞いていますのでどうぞどうぞ。ただ、5時間目が火災の避難訓練で、ちょっとバタバタしているもので、すみません。」

避難訓練の後に、消防士さんによる講習まで通しで、

全学年で話を聞くとのことで、先生たちは確認と準備に忙しそうだった。

挨拶を済ませると子どもたちの訓練の邪魔にならないように、

職員室側にある図工室を見に行く。

入り口には、僕らが卒業制作で作ったという木版レリーフの作品があった。

作ったことも覚えていないが、確かに全員の名前も彫ってあり、

自分の名前もあった。覚えていない記憶でも、

同窓生が3人集まると記憶の補完ができるので思い出す。

記憶のおぼろげさに、改めて30年の時間の長さを実感した。

↓次話



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