#203 『PLUTO』を見て暴君怪獣を思い出した話
『PLUTO』のアニメを見ました
少し前の話になりますが、5月の連休にとうとうNetflixに手を出してしまいました。不安視していた通り、時間が溶けるように見続けています。手を出した理由は『CITY HUNTER』と『PLUTO』が見たかったからなのですが、今回まずはその『PLUTO』についてお話しします。
原作が大好きなマンガのアニメ化ということで、とても楽しみにしていました。原作マンガの連載が始まったのは2003年で、このマンガは手塚治虫先生の『鉄腕アトム』の「地上最大のロボット」のリメイクです。私はこのリメイク元の「地上最大のロボット」も大好きだったので、浦沢直樹先生と長崎尚志さんのコンビがどのようにこの話を料理するのか、単行本派だったので毎回発売されるたびにワクワクして読んでいた記憶があります。原作の連載は2009年に終了しているので、それから14年もの歳月を経てアニメ化されたことになります。
観た感想は、マンガを読んでいた頃には気づかなかった作品の解像度がさらに上がったという印象です。特に主人公ゲジヒトがロボットから人間の感情に目覚めていき、消された記憶を取り戻していく時の心の機微が、より深く理解できました。ゲジヒトの声を演じたのは藤真秀さんです。藤さんといえば、ダニエル=クレイグ版ジェームズ=ボンドの吹き替えで有名な方です。藤さんがゲジヒトを演じたことで、彼以外に考えられないほどのはまり役となり、ゲジヒトに感情移入(ロボットに感情移入するというのも変かもしれませんが)できたことが、さらに物語を深く理解できた理由の一つです。
他の声優陣も豪華でした。第2話での、ノース2号(cv.山寺宏一)とダンカン(cv.羽佐間道夫)のやりとりも素晴らしかった。羽佐間道夫さんは現在御年90歳!ロッキー(シルベスター・スタローン)やハンニバル(特攻野郎Aチーム)、シェーンコップ(銀河英雄伝説)の吹き替えでお馴染みの声優さんです。年老いたピアニストであるダンカンを、その衰えない重厚なお声で演じられていました。
子どものころ「地上最大のロボット」に惹かれた理由
子供のころに『鉄腕アトム』のアニメは何度も見ているはずなのですが、思い出せるエピソードは正直「地上最大のロボット」の回しかありません。よっぽどこのエピソードが子供時代の私の心に刺さっていたように思います。なぜここまで刺さったのか。強敵が次々と味方を倒していくシチュエーションは、多くのこどもたち(特に男の子)にとって特別な魅力があります。また、その物語には主人公が最後に強敵を倒すというクライマックスがあり、その展開は見る者を強く引きつけます。
まず第一に、緊張感と期待感の高まりがあります。強敵が次々と味方を倒していく中で、「次は誰が倒されるのか」「どうやってこの強敵を倒すのか」という疑問が自然と生まれ、物語に引き込まれます。味方が一人また一人と倒されることで、強敵の強さが際立ち、その分、主人公の勝利がどれほど難しいかが強調されます。この緊張感と期待感の積み重ねが、最後のクライマックスに向けての盛り上がりを生み出します。
このような「地上最大のロボット」のシチュエーションが私の子供心を鷲掴みにしたのだと思います。
「ウルトラ兄弟を超えていけ!」
このような興奮は「地上最大のロボット」以外にも覚えたことがあります。それが「ウルトラ兄弟を超えていけ!」です。
今回イラストを描いた暴君怪獣タイラントとは、『ウルトラマンタロウ』第40話「ウルトラ兄弟を超えていけ!」に登場する怪獣です。ウルトラマンタロウはタイムリーな世代ではないので、再放送で見たんだと思います。この「ウルトラ兄弟を超えていけ!」は、太陽系の地球より外側の惑星を舞台に、タイラントがウルトラ兄弟を一人ずつ倒していくという熱いエピソードです。
海王星でゾフィー、天王星でウルトラマン、土星でセブン、木星でジャック、火星でエースを順番に倒していく様子に、子どもながら興奮した記憶があります。タイラントがどんどん地球に接近してくるドキドキ感と、タロウは勝てるのだろうかという緊張感。そして、このタイラントは、これまでウルトラ兄弟が倒してきた7体の怪獣が合体しているキメラ怪獣で、その設定もたまりませんでした。
この回のタイトル「ウルトラ兄弟を超えていけ!」はウルトラ兄弟を倒したタイラントを倒すことによって、タロウよ兄弟を超えろという意味なのだと思います。でも実は逆の意味で、タイラントを応援する言葉なのではと錯覚してしまいますね。
『PLUTO』を観て、暴君怪獣タイラントに思いを馳せる。そんなお話でした。