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不便の勧め

小学生の頃 佐渡島で電気に頼らない生活をしているご夫婦の所に泊まりにいった事があります。
夜は蝋燭とランプ  炊事は薪を使い 畑の収穫と山菜の食事でした。お風呂は五右衛門風呂 川の水を風呂桶に運んで 薪でお湯を沸かし 木の蓋を沈めながら入るというもの
子供心に自然の中での日中の薪割りや風呂のお湯炊きはとても面白かった記憶があります。

今はスイッチ一つでお湯が張られるとても便利な時代です。便利(文明の利器)で得られることは 時間であったり 労力からの開放でしょう。
それで失った物もあるかな? 

五右衛門風呂では 外で自分のために薪をくべている人がいることを知っています。川から水を運ぶことや 薪を作ることの大変さが常に身近です。
お湯ひとつとっても 他の人や自然から恩恵を請けているのを実感します。

しかし 便利さはそれが感じにくいです。
給湯機や浴槽をつくったり配管工事をしている人はいるし 水道システムの構築は大変な労力だと頭では分かるのですが お湯がでることの有り難み 感謝の念は五右衛門風呂と比べると希薄でしょう。

風呂

ここが便利さの怖さかもしれません。
自然の恩恵や自分以外の人の労力で自分は生きているという感覚が抱けないですし ともすると自分だけで(とお金)で成り立っている錯覚に陥ります。

生活を便利にする術はどんどん出てきます。
私もアマゾンや宅配をよく利用します 家から出なくても生活が出来そうです。忙しいときはコンビニの弁当ですまし 色々な情報を入手してはより便利なほうへと進んでいます。
しかし ふと この流れに乗っていると 何やら無味乾燥な生き方になりはしないか?と思うことがあります。
昔は良かった 便利はよくない と言うつもりはありません。 「北の国から」は好きな映画ですが 黒板五郎にはなれません。

住宅の世界にも便利さとファストが主流になりました。建売、売建て モデルハウスは比較検討で事足ります。
○○等級や設備 間取りとインテリアの選定 後はお金が見合えば家が買えます。

そこで あえてそういった世間の主流からはずれて ちょっと面倒な家づくりをお勧めします。
家づくりは長くても2年くらいでしょう。 いつまでも続くものではありません。
でも家が住人に与える影響は大きいと感じます。 だって家で過ごす時間は長く 直接触れているわけですから。
折角の一大事業 消費の一環で終わらせるのはなく 積極的に苦労と喜びを求めてもいいのでは?

自分達がやりたい事 生活を語りながら設計者とキャッチボールで錬るプラン
自分の家は無口で怖い大工が造ってくれたなぁ とか 左官壁はこうやって塗られるのかあ とか現場も見に行きましょう。
自宅で使う桧の立ち姿を見に行く とか 塗装を自分でやるとか 家づくりに参加してもいいでしょう。
(五右衛門風呂をつくるのもいいですが 日常は快適で便利な生活がいいかな)
人の苦労や想いを見る事で 家族で共有の物語がもてると思います。

現場

これからIOTの時代 便利さはより加速していくことは間違いありません。
しかし 便利さは時間的ゆとりをもたらしてくれるかもしれないが 心の滋養にはなりえないでしょう。
便利から外れたところに 意外と面白い事 生きる活力が転がっていると感じる今日この頃  

レッツ面倒で面白い注文住宅の世界へ!

現場見学


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