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【感想】『わたしを離さないで』(カズオ・イシグロ)

ノーベル賞作家、カズオ・イシグロのベストセラー長編作品。2005年発表の今作は、数々の文学賞のノミネート作品ともなりました。

また、「日の名残り」のノーベル賞文学賞受賞をきっかけに、本作品も日本で注目を集めました。

舞台は1990年代末のイギリスの郊外。優秀な「介護者」として働く女性キャシー・Hの物語です。

「提供者」や「介護人」、「ヘールシャム」という ”謎キーワード” が散りばめられるものの、読者には中盤まで、舞台の背景は明かされません。

ただイヤな予感しかしない、そう思いながらページが進めていくと、徐々にその残酷な真実が露わになっていきます。

彼らは何のために生まれ、何のために生きているのか。
私なら、彼らをどのような目で見るだろう…。

人間の残酷さを描いた、というよりは、自分自身の残酷さに向き合う、鏡のような作品に思えます。

本編で印象的に流れる、カセットテープに録音された「Never Let Me Go」(ありそうだけど、架空の曲らしい)がタイトルです。

表紙のカセットテープのデザインは、本自体がケースに見立てられて、とても素敵です。

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