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葉山ひとり旅

やっとお盆休みにはいった。
毎日同じルーティンワークに飽きと焦燥感に駆られていた。

大手企業を辞めてまで入った社員3人の小さな会社。
やりたくて仕方なかったことのはずなのに、また心が満たされなくなっていることに気づく。

サービス業のため、このお盆時期に休みを取れるのは珍しく、せっかくなら1人旅行でもしようと葉山にやってきた。

逗子駅つくと海の近さを感じる強い風が吹いていた。それとともに容赦ない日差し。
都内から離れ遥々遠いところまでやって来たなあ、と少し浮き足立ちつつ、電車の中で前もって探しておいた海鮮が売りの定食屋にきた。

孤独のグルメに出てくるようなお世辞にもおしゃれとは言えない店内。7卓ほどの席数でさほど大きくはない。おそらく家族経営だろうと思われる従業員がせっせと働いていた。

夏休みということもあって男子4人、女子4人のそれぞれのグループが賑やかだった。

他のテーブルは、店の隣にある横浜銀行で働いているのであろう行員ぽい人、30代くらいのOL、どこにでもいそうなサラリーマンって感じである。
その中に1泊2日分の荷物を抱えた20代女性は少し浮いていたと思う。

刺身の盛り合わせ定食を食べたが期待しすぎていたせいか、なんというか普通だった。

また逗子駅に戻り、ホテルに向かうためにバスに乗り込む。
このバス停で降りたのは私ひとりだった。

テレビで話題のホテルがたまたま2部屋だけ空いていて一つは6万、もう一つは2万。もちろん急いで2万の部屋を予約した。
お盆シーズンに一週間前に予約したことを考えると及第点だろう。

ホテルは清潔感あふれ、広々としていた。
大きな窓ガラスで囲まれたフロントからは逗子の海がキラキラ輝いていた。

部屋について少し横になりぼんやりしながら、しみじみと一人旅の良さを実感した。
もし、友達や恋人と一緒に来ていたら荷物を置いてすぐ、前もって計画していた通りに動き出していただろう。

すこし休んでから、ホテルの目の前にある海辺にいくと、ガタイのいい兄ちゃんが裸でEDMを爆音で流しながら日光浴をしているではないか。
夕焼けに染まる美しい海を波の音を聞きながら眺めようと思っていたのに最悪だ。
写真だけとってすぐホテルに引き返した。

ホテルに着いてすぐ、さっきの兄ちゃんを脳内からかき消すべく、最上階にあるオーシャンビーが売りの温泉に向かった。

夕焼けに染まる空と富士山!
蒸気で窓ガラスが曇っていて正直なところ最高な眺めとはいえなかったが、あの雰囲気と夕焼けはとても綺麗だった。

翌日チェックアウトを済ませるとスタッフの方がおもむろに紙袋を渡してきた。
ホテルを経営する母体の会社が日本酒作りもしているということで新商品をぜひとのこと。
まさかお土産に一升瓶を渡されてとは。

嬉しい反面これからの移動が大変になる覚悟を決めバスに乗り、近代美術館にいった。
アメリカ西海岸を旅する写真家の特別展が開かれていた。
旅をする中で出会った人々の写真を撮っていて、洞窟に住む男や幸せそうな家族など旅の中で出会った人々が映し出されていた。

特に印象的だったのがドキュメンタリーだ。
今回の撮影風景を写したもので、写真から創造できないような過酷な現場だった。
洞窟に住む男は、資本主義から取り残され、これまでに虐待、暴力、ドラッグ、戦争と生まれた時から過酷な運命を背負っていた。
そこから逃れ辿り着いた先が荒野の洞窟での生活だったのだ。


美術館をあとにし近くにある古民家のビストロにお邪魔した。いい雰囲気で葉山らしい美味しいご飯を堪能した。
鎌倉を経由して旅路に着く。

休みは5日あったのだが意外にも1泊2日でちょうどよく、案外普段の休みでもやろうと思えばやれないこともないなと考えてみたり。

これといって大きな出来事はなかったが、仕事から離れて1人のんびり過ごすのはとても気持ちがいい。

さて東京に戻るぞ!




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