見出し画像

私的なことを詩的に素敵に語るな!リッチ・ウィガ、プア・ウィガ/アトランタ3-9

ハッキリいって痛快です。
アトランタの通年に渡ったウィットに富んだジョークとクールさに脱帽です。
日本で生まれ日本で育ってしまうとリアルで直面することがなかなか難しい黒人差別問題。
アトランタは、その多様化と複雑さが進む問題に対して細部にわたり描いているドラマだと思いますが、ドラマとしてもちろんしっかりしているし、物語して重くすることもない。
もちろん物語然として終わらせているわけでもない、非常にメタ認知高めでお送りしている各回を見逃さず鑑賞しているのですが、
この回は極めてメタレベルマックスに突出しているかと思われます!

話は2016年頃の設定でしょうか。
高校生のアロンは父親が黒人ですが、見た目は白人の男の子。
友達も白人しかおらず、立ち振る舞いも白人。彼女も白人。
何かの一位のメダルを部屋に飾り、黒人のラッパーを好み、オンラインゲームでは黒人と思わしき対戦相手を戦法で撃破する。
爪を噛む癖のある彼。きっと勉強もそこそこできるのでしょう。
映像は白黒です。ニクイ演出!

大学進学の為に奨学金の申請をしたいのですが、家計は厳しく、父親に進学は無理だと言われる。
そんな時、高校の集会で卒業生が登壇し、朗報を告げる。
大学進学の援助をしたいと。
アロンら生徒は皆、歓喜します。
しかし、援助は黒人限定だと付け加える。
登壇した卒業生は黒人なのです。

しかし、レッドボーンのアロンは諦めずに面談へ。
そこで、黒人とはなんたるか、超細かなHOWTOを問われる。
ヘネシーの割り方。チキンの焼き方。等々。
マスタードかマヨネーズか?には笑いました!
そんなんで分かるのか!笑笑

完全に質問攻めの拷問です。
マイノリティがマジョリティに変わる瞬間。

肌の色で大学にいけないって、なんでだ!と白人のアロンは嘆きます。

そんなアロンは高校を燃やしに行こうと試みます。オンラインゲームと同じ装備を自作して。
怒りのエネルギーとは恐ろしいです。
即効性と瞬発性が凄まじいです。
盲目になってしまう怒りのエネルギーを暗黙のうちに何層にも描いているアトランタというドラマの十八番です。

時は過ぎ、アロンは進学せずに家電量販店らしき場所で販売員をしています。
アロンは何か吹っ切れたのか、自信に満ち溢れ、堂々と生きているかのようにみえます。
黒人の振る舞いで。。

そしてラストこの表情さいこう


百聞は一見に如かず、多くの方にお勧めしたいドラマですが、
なんといっても、私的なこと、例えばワタクシってなんだとか、今日は傷ついちゃって少しなんだかしんどいだとか、空がそんなとき綺麗に見えましたといって雲の写真を載せるだとか、部屋の一角のついつい眺めてしまう場所をロマンチックに感じちゃうとか(決してダメだとは思いませんよ)こんな私的に振る舞う行為そのものがなんだかとっても、、妙に感じてしまうドラマです。日常という土台は同じなのにも関わらず、見え方は如何様にも変化してしまうということを痛感します。
特にこの回。
ストーリーとは全く関係のない話なのにも関わらず、遠回りすぎるやり方ですが、主人公アーン達を描写し、しっかりとピントが合っているのです。
つまり、パッシング(肌の白い黒人が、そのことを隠して白人として生きること)について話しているのです。
パッシングではないものの、存在が同列という意味で、アーンことチャイルディッシュガンビーノその人です。

チャイルディッシュガンビーノ。もとい、ドナルド・グローヴァーはこのドラマ、アトランタで私的なことを語らない。
だけれど、ブラックピープルが如何に辛く騒然な歴史の上に成り立っているのか充分過ぎるほどに伝わる。
一言で黒人といってもその種類とタイプは様々で、現在更に複雑に絡み合い続けている。
そしてアトランタがキング牧師の生まれた地でもあることを私達は思い出す。
もし知らなければ、観ていれば知ることになるだろう。
キング牧師がアトランタで出生しましたよ。と語られる訳ではない。
何故アトランタという名のドラマなのか、観る者は考えるからだ。
現在ではリサーチすることは容易だということを踏まえた上でそれらが成り立っているドラマであること。
そして各回の登場人物の末路や始まりを想像し続け、地続きにある様々な現実の問題に目を向け、更に想像を加速し続けること。
それこそが重要だとアトランタというドラマは教えてくれる。

見ようとすると見えなくなり、見ないと見えてくる感覚と言いますか。

とにかく、近道はしたくない。
そう思う今日この頃です。

嘲笑う訳でもなくcoolな笑いでそれらを感じれるなんて!
必見です。


追伸.
チャプターの紹介文と画像バグどうにかなりませんかね、、
台無し。

各回と画像が違う…文章は誰目線?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?