音高生レッスン帰りの物思い
レッスンからの帰り道、昼食を摂りたくてファストフード店に入った。
「タルタルチキンとポテトをひとつください」店員さんに注文を伝える。
自分の整理番号が呼ばれて、もう1人の店員さんから品の乗ったトレーを受け取って、気がついた。
紙コップに入った水。
注文してないはずなのに。
レシートを見ると注文した品目の下に「サービスウォーター」とある。
なんだか嬉しい。
タダで水がもらえたからではなく、そのさりげない心配りが、たとえそれが接客マニュアルに書かれた「営業」に過ぎないのかもしれなくても、それでも、そのたった一杯の水がわたしを少しだけ優しい気持ちにさせたりする。
相手への礼の尽くし方とか敬い方とか、そういったものの中にはマニュアル化されているものもあるのかもしれない。でも手紙に添えられた時候の挨拶だとか、年賀状に直筆で書き上げられた謹賀新年だとか、今日出会ったレッスンの先生がくれた眼差しだとか、それらに宿っている心を、たとえ自分の勘違いでも、間に受けたっていいじゃん、と思う。
それらから伝わってくる温もりを、気づいて、感じ取って、自分のなかで温める。そんな心持ちでいられたら、日常がもっと嬉しくて、楽しいものになる気がする。
トレーを返しに出口へと向かう途中、男性客とのすれ違いざまに紙ナプキンを落としてしまった。
すると、すれ違った男性客が「ひょいっ」と拾ってくれた。
ありがとうございます。
心からの会釈をして、わたしは心地良くお店をあとにした。
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