見出し画像

【短編小説】迷宮なしの名探偵

※ 今日の小説は、今絶賛上映中の例のアニメが元ネタなので、見たことない(読んだことない)人は恐ろしくつまらないと思います。すみません。

俺は、とある事情があって、高校生というのに小学生1年生くらいの容姿になってしまった。

しかし、俺は、その頭脳とあらゆることをこなすことができる器用さ(音痴であることは除く)で難なく小学一年生の生活に馴染んだ。そして、高校生というのに「探偵」と呼ばれていたこともあり、小学生とは思えない洞察力で、刑事事件を陰で解決している。解決と言っても、公式には俺の名前が表にでることはない。世話になってる森探偵事務所の森小五郎が解決していることになっている。

存在していた高校生の俺は忽然と消えてしまったのだが、学校も周りの大人たちも、俺が「事件を捜査しているため」いなくなったという理由に納得している。そんな理由で納得すること自体、俺的には、ちょっとどうかと思うが、好都合でもある。

世間的に俺は、黒ずくめでもなんでもないのに「黒ずくめの組織」と言われている連中を叩き潰すことを目的の一つにしていると思われているようだ。もちろん、そうすることで元の姿に戻ることができるならいいのだが、本当に元にもどれるかどうか何の根拠もない。一時的に元に戻れる薬はあるにはある。俺と同じように小学生1年生くらいの容姿になった女性が開発したのだが、あくまで一時的だし、くれるときとくれない時がある。

大人の事情で、俺が組織やその他の犯罪者と戦うところばかりが注目されるし、俺も果敢に戦っている姿を見せているが、さすがに最近精神的にもやばいと感じている。

ストーリー的には小さくなってまだ1年くらいしか経ってないはずだが、さすがに殺人事件が多すぎる。俺がちょっと出かけるだけで、殺人事件に出くわしてしまう。人が集まる場所に行くと誰かが殺されるし、高確率で爆弾が仕掛けられている。ほんと心が休まる暇がない。おそらく、1日に数回殺人事件に出くわして解決していないと合わないくらいになっている。そもそも、俺がいる街は世界中のどこよりも殺人事件が多いんじゃないか?殺人事件の動機もヤバいのが多くて、どんな人間の集まりなんだ、この街は?

それに、殺人事件だけじゃなく、どういうことか経済的な被害が甚大すぎる事件に巻き込まれることが多過ぎて、それも嫌だ。ジャンボジェット機、飛行場、アミューズメント施設の観覧車、放送局のビル、サッカー場、ダム、作ったばかりの美術館、リニアモーターカーと駅施設、海に造られた世界的刑事機関の大規模施設などなど、俺が関わると、あっというまに破壊されてしまう。普通、こんな現場に毎回毎回、俺がいることに、公安はおかしいと思わないのか?一番いいのは、俺を出かけさせないことじゃないか。でも、俺は自由に動けるし、特に俺を監視しているわけでもない。

と言っても、探偵事務所にじっとしておけばいいわけでもない。探偵事務所が入っているビルの隣にもビルがあるが、そこの1階には喫茶店がある。そこには公安警察官が潜入している。そして、探偵事務所のビルの1階にある寿司屋の主人は、なんと「黒づくめの組織」のナンバー2がいる。世界的な犯罪組織のナンバー2が寿司握ってるんだぞ。そして、喫茶店の潜入警察官は「黒づくめの組織」にも潜入していて、結構重要なエージェントだ。どうなってるんだ。これは。頭が変になりそうだ。

あーもう、毎日が怖い。少なくとも午前中に一人は殺されて、俺はそれを解決しないといけない。時間もない。しつこいようだがまだ1年しか経ってないんだぞ。

あ、そろそろ、また出番だと言われた。仕方ない。

ふぅ。

「小さくなっても頭脳は同じ!」

(終わり)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?