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ケラっこ阿修羅は仲がよかった

コハルはパンク。目のまわりにゴリゴリアイラインを入れる。
ナツキはサイバー。白のカラコン、ライトグリーンのアイシャドウでまぶたを光らせる。
アキナはゴスロリ。影を作る長いつけまつ毛。黒い口紅をゆっくりとひく。

廃棄基盤で縁どりされた鏡の前でナツキはグリーンのメッシュの入った白銀の前髪に赤いケーブルを絡める。ケーブルの先は後頭部のおだんごに刺さった、LEDがじんわり光るかんざしに繋がっている。

ナツキの右側頭部のコハルは暇そうにスマホをのぞきこんでいる。コハルのメイクは比較的簡素なので、姉妹の中では一番早く身支度を終えてしまう。頭を動かすと繫がっているナツキとアキナの手元が狂うのでインスタを眺めるのも一苦労だ。

「うわ…かっこいい………なあなあ、いつか金持ちになったらこういうの作ろうぜ」

コハルは興奮した様子でナツキにスマホの画面を見せる。それから腕をのばして真後ろにいるアキナにも。
画面の中では筋肉質なダンサーが胸に輝く巨大なペンダント……いわゆるbling-blingを見せつけている。

「阿修羅って漢字にダイヤをまぶしてドーン。ハクがつくぞ!」
「コハル動かないで!」

アイライナー片手にアキナが叱るとコハルはしゅんとおとなしくなる。

「光らせるならLEDのほうがかっこいい」

ナツキは七色に点滅する指輪を左人差し指にはめてうっとり微笑む。

「ねえ。せめてボンネットはしちゃだめ?」
「ダメ。今日は私の日」

ため息と一緒にアキナは黒いレースのボンネットをあきらめた。
コハルも自慢のねずみ怪獣チンジラのスカジャンを着ることができないので調子が出ない。

今日はナツキの日だから、一つしかない胴体にポリエステルの白いオーバーオールを身につける。

「さあフユミを探しにいこう」

ナツキは髪で隠した何もない後頭部を優しくなでた。

【続く】

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