石川優実『#KuToo 靴から考える本気のフェミニズム』批判と疑問【出版社見解編】

1.はじめに

 今回は『#KuToo 靴から考える本気のフェミニズム』の出版元である現代書館から出された見解についての検討です。

 石川さんが非常に重要視しているものであり、著書の検討をするうえで必ず参照しなければならない文章です(特に「石川優実著『#KuToo』について 読者のみなさまへ」)。出版社が公式に発表している事実も重く受け止めなければならないでしょう。

 しかし、「クソリプ」の定義から外れるものまで引用していることや、以前のツイートからの不適切な引用が疑われる「石川氏による反論部分」、リプライではないものがリプライのような形式で表示されているデザインについての説明がないなど、「出版社は2回も見解を出してる」と言えばどのような批判でも封殺出来るようなものではありません。

 「現実世界が動くわけない」個人の勝手な見解ですので、出版社が発表した見解について検討し、矛盾を指摘していきたいと思います。

 ※以下出版社による見解に言及する石川さんのツイートが15個並びます。確認したい人は見てください。見なくてもいいです。

2.出版社見解

2.1.石川優実著『#KuToo』について 読者のみなさまへ

 平素は弊社刊行書籍をご愛読いただき誠にありがとうございます。

この度、弊社刊行の石川優実著『#KuToo――靴から考える本気のフェミニズム』におけるTweetsの引用に対して、捏造、改変、改竄と批判するまとめサイトが存在することが判明致しました。

弊社では、ツイッターでの投稿発言は、私信(手紙、メール、ダイレクトメール等)でなく、世界中で閲覧可能とすることを承認して公表された著作物とみなしております。
公表された著作物は、報道、批評、研究といった引用の目的上正当な範囲内で行われるものであるならば、引用して利用することができます(著作権法第32条)。またその場合、同第48条では著作物の出所、著作者名の明示が定められております。
引用については基本的に著作者の承諾を得る必要はございません。

 本書におきまして、特にその「2 #KuTooバックラッシュ実録 140字の闘い」は、#KuTooの趣旨に賛同していない投稿、石川優実さんを批判する投稿について批評し考察する章となっておりますため、著作権法第32条の規定に従いまして投稿発言(リプライ以外も含む)を原文のまま引用し(割愛する場合は[…]を表記しております。著作物の中〈投稿内〉にリンクを貼った記事の見出しなどが含まれている場合は引用をしておりません。)、同第48条の規定に従いまして投稿者のアカウント名、URLを記載いたしました。

ご理解の程、よろしくお願い申し上げます。

2019年11月
株式会社現代書館 監理室

2.1.1.検討

 前半は著作権法の条文について解説しているだけであるので、問題となるのは著書について当てはめを行っている「本書におきまして、」以降であろう。
 投稿者のアカウント名、URLを記載しているのはその通りである。事実に反しているのは「投稿発言(リプライ以外も含む)を原文のまま引用し(割愛する場合は[…]を表記しております。著作物の中〈投稿内〉にリンクを貼った記事の見出しなどが含まれている場合は引用をしておりません。)」の部分だ。

2.1.1.1.投稿発言(リプライ以外も含む)を

 引用するのは「クソみたいなリプライ(ツイッターの返信機能を使って、見当はずれな内容や中傷的な言葉を投稿すること)」(7頁、脚注1)に限られず、「彼女へのリプライや引用リツイート機能による誹謗中傷、#KuTooのハッシュタグをわざわざつけたバッシングツイート――いわゆる“クソリプ”」(58頁)も含むことを示すためのカッコ書きであろう。

2.1.1.2.原文のまま引用し

 誤字・脱字についてであろう。実際、例えば「クソリプ」内の「石川優美」にママ注記が行われている(正しくは「石川優実」)。
 なお、出版社だけでなく石川氏も「誤字も含めてそのまま」という認識である。

2.1.1.3.割愛する場合は[…]を表記しております

 (Twitterの最大字数など高が知れているのでなぜ割愛する必要があるのか分からない)(都合が悪いことでもあるのだろうか)(二つのツイートを組合せ、200字以上になっている「石川氏による反論部分」も存在する)

2.1.1.4.著作物の中〈投稿内〉にリンクを貼った記事の見出しなどが含まれている場合は引用をしておりません

 今回は、ブログでも新聞のネット版でも、とにかくツイート内にリンクを貼った記事の見出しが含まれているものについて検討する。

2.1.2.矛盾するツイート群

 上で検討した各部分につき、矛盾するツイートを以下に示す。

2.1.2.1.原文のまま引用していないもの

 誤字・脱字と思われる部分についてママ注記を行っているものも存在する(82頁、126頁、136頁、146頁、158頁に掲載されている「クソリプ」)ため、意図的に原文を修正したか、ミスが見逃されたかのいずれかであると思われる。

 ※中身の写真をあげたくないので、「著書での表記」については各自で確認してほしい。

1.60頁下に掲載されている「クソリプ」

 「話し」→「話」に変化

 著書での表記

グラビアの仕事の時はハイヒールを履いて葬儀場のアルバイトの時はハイヒールを履きたくない?矛盾した話です。 #kutoo

2.72頁に掲載されている「クソリプ」

 「#kutoo」→「#KuToo」に変化

 著書での表記

逆に言いますが男性が海パンで出勤しても#KuToo の賛同者はそれを容認するということでよろしいですか?

3.98頁に掲載されている「クソリプ」

 「なに」→「何」に変化

 著書での表記

パンプス履かなきゃならねぇ程度の低レベルな仕事しか就けなかったザコが今更何を喚いてんだ?
#kutoo

4.106頁に掲載されている「クソリプ」

 「伸ばしてても」→「伸ばしてでも」に変化

27トリミング

 著書での表記

ハイヒールが嫌だの化粧が嫌だの挙げ句の果てに女性差別だの言う人間は、役所の窓口で金髪髭ボーボーの職員が出てこようと、謝罪に来た下請け企業の社員がジャージ履いてようと、病院の受付が乳見えそうなタンクトップ着て爪伸ばしてでも文句言うなよ?そこで程度問題とか言い出したら失笑しかない。

5.112頁に掲載されている「クソリプ」

 「まあ」→「まぁ」に変化

 著書での表記

まぁ、それで何が変わるでしょうね?人はお菓子ボリボリ食べながらでもできる「行動」を、そんな簡単に信用するとは思えませんけど?人間を舐めすぎていると言っているんですよ。
#kutoo

6.114頁に掲載されている「クソリプ」

 「本題は、」→「本題は」に変化

 著書での表記

差別差別言われると胡散臭く感じてしまうのは、私の問題かもしれませんし、それについてこれ以上議論しても平行線でしょうからやめます。
本題はパンプスの代わりに何を履けば良いのか提案はしないのか?
ということですね。
提案するつもりがないのなら、単なるポリコレこじらせ人間かなって…

7.116頁に掲載されている「クソリプ」

 「#kutoo」→「#KuToo」に変化

32クソリプ改

 著書での表記

おっしゃる通り、自分の得意な仕事をされたら良い。
しかし、自分の苦手な仕事は相手を変えさせる。。。
これが #KuToo の正体!!

8.160頁上に掲載されている「クソリプ」

「あったんやけどなあ」→「あったんやけどなぁ」に変化

 著書での表記

石川優実で抜いてた時代があったんやけどなぁ、今じゃパンプス騒動なんかに参加しやがって…

2.1.2.2.割愛しているにも拘らず[…]を表示していないもの

 赤線で囲まれた部分が著書では[…]表記無しで割愛されている(赤線は私が書き足したもの)。

1.76頁に掲載されている「クソリプ」

10クソリプ改

2.84頁上で掲載されている「クソリプ」

15クソリプ改

3.102頁に掲載されている「クソリプ」

25クソリプ改

4.124頁に掲載されている「クソリプ」

36クソリプ改

5.134頁に掲載されている「クソリプ」

41クソリプ改

6.156頁に掲載されている「クソリプ」

54クソリプ改

2.1.2.3.投稿内にリンクを貼った記事の見出しなどが含まれているもの

・66頁に掲載されている「クソリプ」

 さらに、「2.1.2.2.割愛しているにも拘らず[…]を表示していないもの」で示したツイートは全てリンクを貼った記事の見出しが含まれている(著書では割愛されており、確認不可能)。上で示しているので割愛。

2.2.『#KuToo』についてのウィキペディアの書き込みについて 読者のみなさまへ

 検証する事項がないので、特に触れない。現代書館が発表したものとして確認はしておくべきである。

2.3.ウィキペディア投稿者に抗議する

 「本書には『ツイートを無断で改変した』事実が存在しない」という文言。こわい。

 吉峯弁護士によるまとめも併せて目を通すとよいだろう。

3.おわりに

 Twitterなどから矛盾の証拠を探せる訳ではないので後半はリンクを張るだけで終わってしまいましたが、とりあえず現代書館による見解について検討したこととします。

 石川さんがかなりの信頼を寄せているように見える出版社見解ですが、著書の内容と矛盾しています(公式発表がこれだけ矛盾しているのは異常だと思うので、私の解釈が間違っている可能性もありますが)。また、引用について説明しているのは「投稿発言(リプライ以外も含む)を原文のまま引用している」「割愛する場合は[…]を表記している」「投稿内にリンクを貼った記事の見出しなどが含まれている場合は引用をしていない」だけであり、「『クソリプ』ではないものまで引用している」「リプライではないものをリプライのように見えるデザインで掲載している」といった批判に対応出来るものではありません。

 石川さんは内容まで把握しているのでしょうか?「弁護士が問題ないと言った」「出版社が見解を出した」と言えばそれが盾となり批判から守られると思ってはいないでしょうか。「出版社が公式に発表したことは正しい」という印象論をゴリ押ししてハッタリをかましているようにも見えます。自分の言葉で説明してほしいものです。出版社見解を用いるにしても、「ここにこう書いてあります、だからあなたの批判は当たりません」くらいは言わないと内容を把握していると信用出来ません。「出版社見解」はマジックワードじゃないんですから。

 出版社について言えば、出版した責任感があれば、このような対応はしないと思います。それとも事実に反することを書いてでも著者を守ることが責任だとでも思っているのでしょうか。まさか著書の内容を把握していない訳ではないでしょうし。著者の説明も出版社の見解も事実と矛盾するならば、正しい情報はいったいどこにあるのでしょう。分かりません。

 以上です。


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