長編連載小説『サンキュー』第731話。
8月上旬に、愛花と美夏が、自転車に乗って、前川家に来た。
「純さん、おはようございます」
愛花がそう言ってきたので、俺が、原稿を書く手を止め、
「ああ、おはよう。今から、銀行に行こうと思ってね。通帳を用意してたんだ」
と言うと、美夏が、
「純さん、大丈夫ですよ。お構いなく。美登里先生とお約束してて、雄一さんがお使いだった部屋の掃除に来ただけですから」
と言って、早速、スティック型の掃除機を手に取り、かつて雄一の部屋だった物置を掃除し始めた。美夏は慣れている。さすがに、介護ヘルパーだ。愛花は、ポニーテールをゴムで束ね、すぐに、バケツに水を汲んで、雑巾がけをし始めた。(以下次号)
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