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長編連載小説『サンキュー』第715話。

 恒彦はもっと知らない。警察官と言えば、昔の官憲を思い出して、震え上がっていた。その時代生まれなのである。映子の近所のオジサンも、官憲だった。映子が小さい時に、つまり、戦後すぐに、マッカーサーが日本に来た時、赤狩りをして、思想犯をパージする時、そのオジサンが、活躍した。映子にとっても、50年程前の出来事で、はっきり言って知らない。レッドパージは、戦後すぐから、朝鮮戦争ぐらいの頃の話だ。映子も小さかった。恒彦が、夜になると、官憲のオジサンの話をした。父の語り草だった。(以下次号)

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