見出し画像

長編連載小説『サンキュー』第343話。

 父は、最後の数年は、歩行障害を起こして、歩行器で移動した。でも、聖書を読むのだけは忘れなくて、必ず、一日に、10ページずつ、読んだ。多い時は、50ページほど読んで、気になる箇所は、抜き書きして、ノートに控えておいた。父は、まめだったのである。性格がそうだった。元々、几帳面で、何事もお座なりに出来なかった。父の性格は、晩年まで続いた。実際、歩行障害を起こしても、老人施設の庭を、歩行器で歩いた。職員が介添えしようとすると、嫌がった。それが、父の性格だったのだ。84歳で死去するまで、元気だった。麗はまだ、生きている。夫婦で、戦後の激動の時代を生き抜いたのだ。(以下次号)

いつも読んでいただき、ありがとうございます!