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長編連載小説『サンキュー』第852話。

 2022年の夏が終わり、秋が訪れると、朝倉市は急速に涼しくなってきた。俺は、相変わらず、原稿を書くのが忙しくて、徹夜ばかりしていた。実際、作家というのは、パソコンに向かえば、延々、仕事をしないといけない。疲れることばかりだった。秋の前川家には、俺と映子、美登里、そして、息子や娘、孫たちしか揃わなかった。雄一は、寺田の病院に入院中で、帰ってきてない。何も音沙汰がないところを見ると、これでいいのだろう。俺には、
そう思えた。実際、俺は、好きなことをやっている。映子も、出てばかりいる。うちの中は、静かだった。誰かいても、何の声掛けもないまま、2022年の秋の時間は過ぎ去っていった。愛花も、来なくなった。介護する対象がいない以上、来ても仕方ないと思ったのだろう。(以下次号)

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