見出し画像

お義母さん、僕の子供を産んでください No.7 日常

「お早うございます。お義母さん」
「ああ、お早う、タカシさん」
「お母さん、お早う」

三人で暮らし始めてもう二年だ。
それぞれの支度を済ませて、三人は朝食のテーブルに着いた。

義母は私と絶対に目を合わさない。
合いそうになると、慌てて目を逸らす。
胸がキュンと鳴る。

妻は、すっかり元のクールな社長に戻った義母に言った。
「お母さん、今日は休んだら⁉」
「何でよ? 休む理由なんてないわ。それに会議もあるし」
「それは私が出るから大丈夫よ。それより・・・」
言いにくそうにもじもじしている。
こんな妻を見るのも珍しい。

私と義母の脳裏に昨日の出来事が蘇る。
妻が留守だった間、私たちは何度も愛し合った。

娘の言いたいことに気付いたのだろう、義母は一瞬頬を赤く染めた。
しかし次の瞬間にはもう元に戻っていた。
「私よりあなたの方が心配よ。帰ったのは朝でしょう!? ちゃんと寝れたの?」
「うん、ぐっすり」


それは嘘だった。
夜が明けてから帰ってきた妻は、一睡もしていない筈だ。
私と義母のことを思うととても眠れなかったのだろう。
私が起きるのを待っていたように妻は言った。
「ねえ、タカシさん・・・お母さんとは、その・・・うまく行ったの?」
「うん、ちゃんとやったよ」
私は不自然なほど冷静に答えた。
それ以外にどんな顔をしていればいいのか、分からなかったのだ。

「な、何回、やったの?」
「・・・・4回・・・・」
「凄い! 4回も! ありがとう、タカシさん!」
本当は5回だった。
空が白み始めるまで、義母を寝かさなかったのだ。

そしてふと我に返り、私に言った。
「それで・・・お母さんは・・・どうだった?」
女としてそこが一番気になるところなのだろう。

私は心を鬼にして、出来る限り妻の傷が浅くなるよう嘘をついた。
「お義母さん、酷いんだよ。胸も触らせてくれなかったよ。もちろんキスも」
それを聞いた途端、妻の表情がパッと明るくなった。
「うそ⁉ 本当に?! 酷いわね、それは・・・そう、キスもさせてくれなかったの?」
同情している風を装い、嬉しそうな気持を隠せないでいる。
「ああ、俺をロボットか何かだと思っているんだよ、お義母さんは」
「ふふふ・・・可哀そう」
そう言って笑う妻が愛おしい。
妻の為なら嘘だってつこう。
それで歓んでもらえるなら。

「もう大丈夫ね!?」
「はは・・・それは判らないよ。神様にあとは任せないとね」
「ダメよ。神頼みなんて。お願い、今日もやって! まだ確立的には大丈夫なはずなの」
「今日も・・・!?!」
「そうよ、チャンスなんだもの。何回でもして欲しいの」
「待てって・・・。お義母さんの事情もあるし」
「お母さんには私から言っておくから。だから、ね⁉ いつでもいいから、出来る時にはやって欲しいの」
「あはは・・・佳代子、言い過ぎだよ。ちょっと悲しくなってきたよ」
「ごめん・・・私も辛いのよ。私たちの子供のためよ。あなたの子供が欲しいの! だからお願い!」
目に涙を浮かべる妻に、それ以上何も言うことは出来なかった・・・。


「佳代子、本当に大丈夫? 目が赤いよ」
「別に泣いてなんかないわよ」
私と義母の胸にチクリと棘が刺さった。
そうか・・・泣いてたのか・・・・。

笑顔を作ってはいるが、本当は泣いていたのだろう。
いくら子供のためとはいえ、愛する夫に母を抱かせるのだから。
そんな思いをしてまでも・・・。
妻の気持ちは、私と義母の胸を打った。

「佳代子・・・ごめんね。お母さん、頑張るから」
「お母さん、謝らないで。私が頼んだんだから」
そう言って、妻は私をチラッと見つめた。
「お、俺も頑張るよ」
「私は何も出来ないけど、よろしくお願いします」
妻の屈託ない笑顔に、私たちは声を出して笑った。

義母とやっと目が合った。
まいったわね・・・
そうですね、お義母さん・・・
義母のその微笑みは、全てを受け入れるような慈愛に溢れていた。


「社長、お早うございます!」
会議室に遅れて入ると、企画と営業の人間が揃っていた。
「遅れてごめんなさい。それで、あの件はどうなったの?」
椅子に座るや否や、社長の鋭い槍のような言葉が飛び、そこにいる者たちに緊張が走った。

「私は言ったわよね⁉ 期日までには仕上げてくれって。まだそんなことで間に合うと思ってるの?」
「しかしそれはその向こうの事情で・・・」
「それを何とかするのがあなたの仕事でしょ!? もし出来ないのなら言ってちょうだい。他の人にやらせるから」

情け容赦ない社長の言葉に、身震いする男たち。
「そういうことですので、皆川さん、本社にはもう少しお待ちくださるようお伝えください。必ず良い物に仕上げますので」
義母は、契約会社のオブザーバーである私に向かって言った。
その顔に、昨夜の女の顔は微塵も感じさせない。

「じゃあ、後は頼んだわよ、佳代子」
「はい、社長。任せて下さい」
その言葉で会議は終わり、私たち二人を残してもぬけの殻となった会議室。
ここは会議室兼社長室でもあるのだ。


私たちは、事務的な書類の受け渡しと伝達事項を伝え、最後に言った。
「それでは、昼からサンプルをお持ちしますね、お義母さん・・・あっ!」
「うふふ・・・いいのよ、二人だけの時は」
「じゃあ、・・・」
「ダメよ! 名前はダメ」
「何で分かったんですか? お義母さん」
「伊達に社長をしてきていないわよ。あなたのことならすぐに分かるわ」
「じゃあ僕が今、考えていることを当てて下さい」
そうね・・・・と言って、義母は口をつぐんだ。

「そろそろ帰った方がいいんじゃない⁉」
「あ、話を逸らした」
「もういいじゃない。早く帰りなさいよ」
頬をほんのり染めて目を背ける義母。

「お義母さん、佳代子から聞いてないんですか?」
「なに? ・・・・そ、そのことね・・・」
「いつでも出来る時は・・・」
「聞いているわよ! 言わなくていいから!」

じっと見つめる私に、義母は戸惑いながら言った。
「だ、だめよ、ここじゃあ・・・」
頬を染め慌てる義母が愛おしい。
「かわいい」
思わず心に浮かんだことが口を滑った。

「ダメよ、タカシさん! こんな所で」
義母は慌てて私の口を押えた。
「じゃあ、どこならいいんですか?」
「え⁉ それは・・・家とか・・・・」
「じゃあ、家に帰ればいつでもいいと言うことですね!?」
「そ、それは・・・・」
「じゃあ、ここで。その気になっているし」
「え⁉ どうしてその気になんか・・・?! 私、なんかした?」
「お義母さんが綺麗で可愛かったから」
「タカシさん! しっ! ダメよ、言わないでったら」
「佳代子に言われたんです。その気になったら、どこでも・・・!」
「しっ! ダメよ、言わないで!」
義母は私の口を押えながら笑い出した。

「もう、タカシさんったら。私を困らせたいの?」
「はい」
「あははは・・・素直ね」
「慌てるお義母さんが可愛くて」
「また・・・もう・・・」
「嫌ですか? 言われるの、嫌?」
「そんなことは言ってないわよ・・・嫌なはず、ないじゃない・・・」
小さな声で呟く義母が可愛く見えて仕方ない。
「お義母さん、抱き締めてもいい? ちょっとだけ」
「ダメよ・・・でも・・・ちょっとだけなら」
そう言った刹那、私は義母を抱きしめていた。

「ああ、タカシさん・・・私、これから社長をやらなきゃいけないの。出来なくなっちゃう」
いつもクールで人を寄せ付けないような美人である義母の言葉に、私はときめいた。

思わずキスをしようとする私の胸に手を着いて義母は言った。
「本当にダメ。口紅がとれちゃうわ」
「また塗ればいいじゃないですか」
「簡単に言わないでよ。難しいのよ、口紅をひくのは」
「じゃあ、舌を出して」
「え⁉」
「早く」
「分かったけど・・・うっ、ああっ」
私は義母が遠慮気味に出した舌をぺろりと舐めた。
「引っ込めちゃダメ。もっと出して」
私は義母の舌を唇を細めて吸い上げた。
「んああ・・・ああああ・・・」

義母は喘ぎながら私に抱きついた。
「あああ・・・ちょっとこのままでいて・・・あああ、ひどいわ・・・」
私はニコニコしながら義母を抱きしめた。

「社長、誰か来ちゃいますよ」
「意地悪ね・・・こんなにしたのは誰よ」

義母は私から離れると背を向け、深呼吸をして言った。
「早く行って」
私が背を向け歩き出すと、義母は駆け寄り、私を振り向かせ、唇を押し付けた。
突然のことに目を見開き、固まる私。

ほんの2~3秒が、私には長く感じた。
腰が抜けそうになって、椅子の背もたれに手を着いた。
「うふふ・・・お返しよ」
そう言って義母は楽しそうに笑った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?