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フリーランス、一人会社がインボイス制度、電子帳簿保存法へ対応するのは大変!

 政府が2018年頃より掲げた「働き方改革」の一環として、副業・兼業の解禁を推奨していますが、新型コロナをきっかけにリモートワークが浸透したためか、私たちの事務所でもITエンジニアのご職業を中心に、副業・兼業に関する確定申告の相談や、法人成り・法人設立検討の相談が増えてきた印象があります。
 そんな状況のなかで、ITエンジニアに多いフリーランス(税務的には「個人事業主」)や一人会社に大きな影響を与える税制改正が行われています。
 この記事では、できるだけポイントを絞って、税制改正の影響の大きさが伝わるようにまとめてみました。

1.300万円以下の副業収入が事業所得として認められなくなる⁉

 副業が認められてる会社に勤務している場合、副業を事業所得として申告することで、収入が増えるだけでなく「青色申告特別控除」や「損益通算」といった税制上のメリットを受けるケースがありました。具体的には、青色申告をすることで得られる最大65万円の所得控除を活用することで、事業所得を減らすことができ、もし事業所得が赤字になっても、給与所得と相殺することで節税ができていました。さらに家族への給与を経費にできる「青色専従者給与」のメリットも受けられます。

 しかし、事業というには小規模な副業収入でも事業所得として申告するケースなどについて、国税庁が問題と捉えたようで、8月1日公表の所得税に関する法律の改正案において、300万円を超えない副業収入は「事業所得」ではなく「雑所得」として原則取り扱うことが記載されています。(詳細は、『「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)』を参照)
 雑所得の場合、事業所得のような「青色申告特別控除」や「損益通算」がないため、税負担が重くなります。
 現段階では上記の通達は「案」ではあるものの、このまま成立すると来年の確定申告に影響するため、副業が今年300万円を超えない見込みの場合、事業所得として申告することが適切なのかどうか検討されることをお勧めします。

2.インボイス制度のせいで消費税が課税される⁉

 「インボイス制度」は消費税に関する新しい制度ですが、フリーランス・会社員の副業に関わらず個人事業主として少しでも収入がある場合に関係するため、必ず押さえるべき制度です。段階的な経過措置があるものの、来年(2023年)10月から施行されます。

 インボイスとは、所定の記載要件を満たした「適格請求書」のことで、今まで請求書に記載が必要だった項目に加えて、以下の記載が必要となります。

①登録番号(2023年3月31日までに要申請
②適用税率(消費税が8%か10%か)
③税率ごとに区分された消費税額等(商品ごとの税率の内訳)

 消費税の納税のざっくりした仕組みは、売上にかかる消費税(売上100万、消費税10万)から、仕入にかかる消費税(仕入40万、消費税4万)を控除した残額(消費税6万)を納付する流れになっています。
しかし今後は、仕入先が「適格請求書」を利用していないと、仕入れにかかる消費税が控除できなくなります。何故こんなキッチリ決めるかというと、この制度導入の趣旨が、すべての取引に課税されている消費税を明確にして、税収拡大につなげることにあるからです。

 また、消費税には免税事業者の制度があり、売上が1000万円以下の場合、免税事業者に該当し、消費税の納税義務はありませんでした。そのため、消費税分の金額を上乗せして請求しても、その分「益税」(上記の例では10万)として利益になったのですが、制度導入後は、免税事業者のままでは「適格請求書」が発行できなくなります。
 そうすると、仕入れにかかる消費税が控除できないことが影響して、取引先から受注がしづらくなったり、報酬を減らされる可能性があると考えられます。
 そのため、課税事業者に登録せざるをえない状況になっていくかと思いますが、今度は課税事業者として、消費税の申告と納税義務が発生します。これだけ書くと、個人事業主の負担が増すだけのネガティブな制度改正ではありますが、「益税」という不公平な状況が見直されたとも言えるので、何とも難しいところです。

3.電子帳簿保存法で領収書管理が面倒になる⁉

 今年1月に電子帳簿保存法の改正法が施行されました。電子帳簿保存法は、税法で定めた書類(請求書、領収書など)の電子データ保存に関するルールで、今回の改正でオンライン取引が世の中に浸透した昨今の状況に合った内容に見直されました。

 主な改正点は以下の4点です。
①     電子データでの保存について、税務署の事前承認が不要となる。
②     会計ソフトで作成した仕訳データ等は印刷せずに保存していい。
③     領収書などをスキャンした場合、タイムスタンプなどの要件を満たせば、紙保管不要。
④     オンラインの取引については、データ保管のみ認める。紙保管は認められない。

 上記の改正で対応が必要なのが③④になります。③④はスキャンまたはPDFで受け取った請求書、領収書などを保管すれば足りることになり、紙の管理コストが減るため喜ばしいのですが、下記4点の要件のいずれかに従う必要があります。

(ア)  2か月+7営業日以内にタイムスタンプを押す
(イ)  タイムスタンプ付きの請求書、領収書データを受け取る
(ウ)社内で事務処理ルールを用意して、ルール通りに処理する
(エ)訂正削除の記録が残るシステムなどを使って保管する

 当然ですが、データファイルを無造作にPCに保管したり、ECサイトで取引履歴が確認できるだけの状態ではダメです。また、④は義務になりますが、あまりに管理がひどい場合は青色申告申請が取り下げられる可能性もあるとのことです。

4.どう対応すればいいの⁉ 

 インボイス制度・電子帳簿保存法へ対応しようとすると、消費税の申告納付と資料管理の徹底という2つのタスクを抱えることになるため、フリーランスや代表のみの会社にとって間違いなく負担となります。本業への集中の妨げにもなり、大げさかもしれませんが、経営課題ともいえます。
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